イーサリアム (ETH) マイニングとは
マイニングとは仮想通貨の取引内容を確定して報酬を得ることです。マイニングは膨大な量の計算を行う必要があるため、高性能なコンピューターが必要になります。
イーサリアムのマイニングでは膨大な量の計算を誰よりも早く行う必要があります。
イーサリアム (ETH) の承認方式
イーサリアムのマイニングはPoW (プルーフ・オブ・ワーク) と呼ばれるルールが適用されており、これは一番早くにマイニング作業を終えたマイナーだけが報酬を得る仕組みです。報酬を得るには大量の計算を誰よりも早くこなす必要があるため、高性能なコンピューターが必要となります。
イーサリアム (ETH) とビットコイン (BTC) のマイニングの違い
ビットコインも承認方式にイーサリアムと同様にPoWを採用しているため、マイニングの仕組み自体に大きな違いはありません。
ただし、マイニングの難易度は主にその仮想通貨の人気に比例するため、ビットコインのマイニングは世界で一番難しいものになります。ビットコインマイニング専用の高性能なコンピューターを用いても、1日あたりの報酬は微々たるものであり、かつ電気代もかなりかかります。
一方、イーサリアムであればビットコインよりもマイニング報酬は少し高めとなっています。それでも難易度が高いことには変わりませんが、マイニングするならイーサリアムの方がわずかに有利です。
ただマイニングの難易度は毎年状況が変わり、常に一定ということはありません。次の年になれば急激に難易度が上がるケースも多々あります。そのため、イーサリアムのマイニングによって儲けることはあまり期待せず行うとよいでしょう。より難易度が低い他のアルトコインのマイニングに挑戦するのも一つの手です。
イーサリアム (ETH) マイニングにかかる費用
マイニングをする際はコンピューターや、その稼働のために電気を使用するため、費用が発生します。具体的にイーサリアムをマイニングする際にどのくらいの費用が発生するのか、以下に解説します。
PC代
マイニングを既に所有しているPCで実施するのであれば初期費用無しで行えますが、本格的にマイニングを行うのであれば設備投資は必要になるでしょう。マイニングを行うには一定以上の性能を持つグラフィックボード(GPU)を搭載したPCが必要になりますが、このようなPCを購入する場合、15万円以上はかかると見たほうが良いでしょう。
また、イーサリアムのマイニングに最適化されたマシンが実は販売されています。イーサリアム専用のマイニングマシンにはいくつかの種類がありますが、そのうちの1つが「INNOSILICON A10 Pro ETH Miner」です。価格はおおよそ12,000〜12,500ドルで、日本円に換算すると約130万円〜135万円です。基本的に性能が高ければ高いほどマイニングの効率は良くなりますが、同時に初期費用の回収も難しくなります。
電気代
マイニングを行う場合、PCを稼働させるための電気代がかかります。使用するPCの種類や稼働時間、契約している電力会社などによって電気代は変わってきますが、大体1日にかかる電気代は100円から500円です。世界で見ても日本は電気代が高い国のため、マイニングで利益を出すのが難しいと言われています。
電気代を少しでも抑えたいのであれば、グラフィックボードの種類を変えるのが良いでしょう。おすすめはNVIDIA社の「GeForce RTX 3070」です。「GeForce RTX 3070」は、前世代最上位クラスのグラフィックボードである「GeForce RTX 2080 Ti」と比較して、同等のGPU性能を持ちながら消費電力を15%ほど抑えています。
マイニングを行うのであれば、グラフィックボードに関する知識は欠かせないので、それぞれの性能や価格、消費電力などについて調べてみてください。
イーサリアム (ETH) マイニングは儲かる?
先ほどマイニングにかかる電気代は1日に付き100円から500円と説明しましたが、高性能なマシンを24時間稼働させた場合、おおよそ500円はかかることとなります。その場合に得られる収益が1,000円前後なので、実際の利益は1日につき500円前後です。マイニングで使用するPCは少なく見積もっても10万円以上かかるので、1日500円前後の利益が出ても初期費用の回収に半年以上かかります。
先ほど紹介した「INNOSILICON A10 Pro ETH Miner」であればより効率良くマイニングを行えますが、初期費用が大きいので回収する期間はそれほど変わらないかむしろ長期化することも考えられます。
もちろん、ビットコインのマイニングよりはイーサリアムのマイニングの方が報酬を得やすいですが、初期費用や電気代を考慮すると大きな利益を上げるのは難しいと言わざるを得ません。
こういったことを総合的に考えてイーサリアムのマイニングを行うかどうか検討してみてください。
イーサリアムマイニングで儲けるには
先程の解説の通り、イーサリアムのマイニングで大きな利益を得るのは難しいのが現状です。ただ、それでもマイニングで儲けたいと考える人もいるでしょう。また、既に高性能なPCを所有しており、初期費用をかけずにマイニングを始められる人もいるのではないでしょうか?
そこでここでは、イーサリアムのマイニングで儲けるための方法や注意点についてまとめました。
マイニングプールやクラウドマイニングに参加する
マイニングにはソロマイニングとプールマイニング、クラウドマイニングという3つの方法があります。
ソロマイニングは設備などを1人で用意して行うマイニングの方法です。1人でマイニングを行うため、報酬を総取りできるのがメリットですが、イーサリアムのマイニングでは資本力のある企業が高性能なPCを揃えて参入してきているため、そもそもマイニングに成功することが難しいというデメリットがあります。
プールマイニングは複数のユーザーが協力してマイニングを行う方法であり、報酬は最初に管理者が受け取って、仕事量に応じて参加したユーザーに報酬が分配されます。複数のユーザーが協力するので1人で行うときよりも計算力が大きくなり、安定したマイニングを行えます。一方、プールへの参加には手数料が必要になるのと、ソロマイニングのように大きな報酬を得ることはできません。
クラウドマイニングはマイニングを行っている企業に出資して自分の代わりにマイニングしてもらう方法です。この方法の場合は自分で機材を準備する必要はなく、パソコンの知識が無くてもお金さえ用意すればマイニングできます。ただし、企業による資金の持ち逃げがあったりソロマイニングやプールマイニングよりも初期費用がかかるケースがあったりするので注意しましょう。
一般的に自分でPCなどを用意してイーサリアムのマイニングを始める場合、プールマイニングで行うこととなります。
イーサリアムが値上がりしているときに行う
マイニングでは最終的に報酬として得たイーサリアムを日本円に換金するため、イーサリアムの価格が上昇しているときにマイニングを行えば相対的に大きな利益を得られます。
ただし、値上がりのタイミングを見極めるには、ユーザー自身が綿密に情報収集を行い、チャートも見極める必要があるなど、投資に対する知識が必要となります。
電気代の単価を抑える
電気代とマイニングの成功率は相関性があるので、基本的には消費電力は落とさない方がよいでしょう。しかし、どうしても経費として電気代がかかってしまうことは否めません。電気代を抑えてマイニング報酬の利益を最大化することを狙うには、次の2つの方法があります。
電気代の単価が安い会社やマイニングに向いたプランを契約する方法と、電気代が安い地域でマイニングを行う方法です。
まず、電気代の単価やマイニング向けのプランを考慮するのであれば、電気代が定額の電力会社がおすすめです。中でも「CDエナジーダイレクト」は一定のキロワットアワーまでは定額のプランが有るため、電気代の基本料金を安く抑えることができます。
また、電気代は地域によって異なるため、単価を抑えるのであれば北陸や中国、九州地方でマイニングすることで電気代を抑えられるでしょう。ただし微々たる差のため、頭の片隅に入れて置く程度で問題ありません。
ハッシュレートの高いマシンを使用する
マイニング報酬を最大化するにはコンピューターの性能も重要となります。マイニングを行う際の計算力のことをハッシュレートと呼びますが、当然ながらハッシュレートが高いほうがマイニング効率は良いです。しかし、ハッシュレートの高いコンピューターは価格が高くなるため、回収すべき初期費用も大きくなります。
また、ハッシュレートの高いコンピューターを用意するときに注意したいのが、今後ハッシュレートを制限したグラフィックボード(GPU)が販売される可能性があるということです。
最近では、GeForceシリーズの製造や販売を行っているNVIDIA社が、2021年5月19日の公式ブログにて新作のグラフィックボードにはイーサリアムマイニングのハッシュレートに制限をかけることを発表しています[1] NVIDIA公式ブログ, A Further Step to Getting GeForce Cards into the Hands of Gamers,2021年6月6日参照。これは、マイニング需要により市場でグラフィックボードが品薄になっていることを受けたものです。ハッシュレート制限がかかった製品には「Lite Hash Rate」や「LHR」の記載が外箱にあるので、確認してから購入するようにしましょう。
イーサリアム (ETH) マイニングは終了する?
ここまでイーサリアムのマイニングで儲けるのは難しいことを説明してきました。しかし、イーサリアムのマイニングで儲けるのが難しい理由はもう1つあります。それはマイニングの終了です。
イーサリアム2.0で承認方式の変更へ
イーサリアムのマイニング報酬が終了する要因として挙げられるのが承認方式の変更です。
2021年現在 、イーサリアムの承認方式にはPoW (プルーフ・オブ・ワーク) が用いられていますが、この承認方式の問題として電力を大量に消費することや一部のマイナーがマイニングを寡占化してしまっていることが挙げられています。
上記の問題を受けて、イーサリアムはイーサリアム2.0へのアップデートによって、承認方式をPoS(プルーフ・オブ・ステーク)に変更することが決定されています。PoSとは計算量ではなく、ブロックチェーン上に資産を預け入れることによって取引の承認を行う方式のことです。
承認方式の変更でマイニングは終了する
PoS (プルーフ・オブ・ステーク) では、マイニングではなくブロックチェーン上に資産を預け入れる「ステーキング」で報酬を得ることになります。2020年12月にはステーキングを行うことができるPoSチェーンの「ビーコンチェーン」が実装されました。遅くとも2022年末までにはこのビーコンチェーンと現在のメインネットワークが統合され、PoSへの移行が完了します。また、それと同時にイーサリアムのマイニングも終了します。
つまり、今からイーサリアムのマイニングを始める場合、マイニングが終了する時期までに元を取れるかどうかまでを考えることが必要です。
イーサリアムのマイニングまとめ
確実に言えることとしては、2021年時点でイーサリアムのマイニングで報酬を得ることは可能です。しかし、イーサリアムマイニングの人気の高さから、初期費用や電気代を考えると大きく儲けるのは難しいでしょう。
さらに、イーサリアムの承認方式は遠くないうちにPoW (プルーフ・オブ・ワーク) からPoS (プルーフ・オブ・ステーク) に切り替わることを予定しており、完全に切り替わった時点でマイニングも終了します。そのため、マイニング報酬を得たいのであれば参入は今しかないことになりますが、承認方式が切り替わったタイミングでマイニングができなくなるので、あまり大きな額の初期費用を投じると回収できなくなる可能性があります。
もしこれからイーサリアムのマイニングを始める場合、イーサリアムの動向を常に意識しながら行うのが良いでしょう。