イーサリアムの仕組み解剖 | スマートコントラクトやICO、マイニングについて

イーサリアム (ETH) の仕組み

仮想通貨で目にすることが多いイーサリアムですが、具体的にどのような仕組みになっているのか知らない方もいっらしゃるのではないでしょうか。

他の仮想通貨にはないイーサリアムの特徴的な機能として「スマートコントラクト」があります。スマートコントラクトはイーサリアムをイーサリアムたらしめているといっても過言ではない重要な機能なので、ここで仕組みやメリットなどを確認しておきましょう。

スマートコントラクトの仕組み

スマートコントラクトとは、プログラムによって契約を自動的に実行する機能のことです。イーサリアムはこのスマートコントラクトをブロックチェーン上で実行することができます。スマートコントラクトを構成するフローは以下の4つです。

  1. 契約の定義
  2. イベントの待機
  3. 契約実行・価値の交換
  4. 支払い・精算

最初の流れはプログラムによる契約の定義になります。具体的には、カーシェアリングで支払いが完了したら決められた期間だけ鍵を有効にしたり、特定の期日までに商品を受け取ったら自動的に支払いをしたりといった取引内容のことを指します。

イベントの待機では、上記で説明した契約の定義で定められた条件が無事に行われるまで実行されることはなく待機状態になります。無事に定義された契約が行われるとプログラムが実行されて価値の交換に移ります。その後、支払いや精算に移るという流れです。

これらの契約や取引はプログラムによって自動的に実行されるため、仲介人などの人手は必要ありません。従来の契約においては取引やその事務処理を行う第三者が必要でしたが、スマートコントラクトを利用することでその分のコストや手間を省くことができるのです。

また契約を自動的に実行するという性質から、金融や不動産をはじめとしたさまざまな分野で活用することができ、このイーサリアムの技術が普及すれば多くの業界で中央集権型の組織を不要とした仕組みができあがるでしょう。

さまざまなところでイーサリアムのブロックチェーンを用いたスマートコントラクトが使われれば、それに伴ってイーサリアムの価格も上昇することになります。

スマートコントラクトとGas (ガス)

イーサリアムには、ガス (Gas) と呼ばれるスマートコントラクトを実行するのに必要な手数料があります。

ビットコインのような仮想通貨の場合、送金に対して手数料がかかりますが、イーサリアムの場合は送金以外にスマートコントラクトの実行にも手数料であるガス (Gas) を支払わなければなりません。なお、ガスは内部通貨であるイーサ (ETH) によって支払われます。

イーサリアムを利用して送金やスマートコントラクトを実行する場合、ガス代である「Gas Price」と上限値である「Gas Limit」を自分で設定します。この2つの数値を掛け合わせた値がガス代として最大限使える手数料です。原則としてマイナーはガス代の高い取引から承認を行っていくため、自分で設定したガス代が安すぎるとなかなか取引が成立しません。また上限値が不十分の場合、トランザクションの実行は中止となり、途中まで使用されたガスは戻ることはありません。ただし、十分な上限値を設定した場合、余ったガスは返却されます。

適切なガス代を設定するには「ETH Gas Station」で現時点におけるガス代の相場を確認するのが良いでしょう。

スマートコントラクトのメリット

スマートコントラクトのメリットは、先ほども説明したように契約やそれに伴う取引に第三者を必要としない点です。

契約はプログラムによって自動的に実行されるため、従来であれば必要だった人件費などの契約に関するコストが低下します。また、契約はあらかじめ定義された条件に合致した場合のみ実行されるので、未払いや持ち逃げといったトラブルが起こることはありません。つまり、契約相手の信頼コストを下げることができ、契約を交わす双方にとってメリットがあります。

さらにスマートコントラクトはブロックチェーンの技術を用いているため、人為的に改ざんすることは実質的に不可能なことや、取引の内容を誰でも見ることができるという透明性の担保といったメリットもあります。

上記のメリットをまとめると以下のようになります。

  1. 契約に関する手数料の低下
  2. 契約相手の信頼コストの低下
  3. 改ざんが不可能で不正が起こりにくい

これは今まで中央管理者を必要としていた金融の仕組みを覆すほどの画期的なシステムと言えるでしょう。

ただし、スマートコントラクトにも問題点はあります。問題点が解決されない限りあらゆる分野での普及は難しいと言わざるを得ません。次にスマートコントラクトの問題点を解説していきます。

スマートコントラクトの問題点

スマートコントラクトには、大きな問題点が3つあります。

  1. 法律に関する問題
  2. プライバシーに関する問題
  3. 脆弱性の検証に関する問題

スマートコントラクトは新しい技術であるため、まだ十分な法整備がなされていません。現状ではさまざまな分野で法整備が進められている段階で、ここ最近では改正資金決済法が定められました。これは、仮想通貨取引所がユーザーの情報をチェックしてマネーロンダリングの疑いがある場合、金融庁に届け出を行う義務があるというものです。

今後の法整備の内容によってはブロックチェーンやスマートコントラクトの有用性が低下するといったこともあるかもしれません。法規制によってイノベーションの促進が遅れるデメリットはありますが、詐欺や犯罪組織に収益を移転させないようにするためのものでもあるため致し方ない側面もあるでしょう。

プライバシーに関する問題は、スマートコントラクトで行われた契約内容が公開されてしまう点です。

先ほど説明したように、スマートコントラクトはブロックチェーンを利用しているため透明性の担保が可能な一方、取引内容に関してはプライバシーが存在しない状態です。また取引内容から取引を行った個人や団体を特定することも不可能ではありません。ユーザーが自分のプライバシーを完全に守りたい場合などについては改善が必要です。また、個人情報保護法には個人情報の取り扱いについて定めがあるため、こうした法律に対する適法性も今後の課題と言えるでしょう。

脆弱性の検証に関する問題は、スマートコントラクトは一度契約のプログラムを構築すると変更ができないことが挙げられます。従来の中央管理者が存在するアプリケーションでは不具合が発生した場合、サービスの利用を停止してプログラムを修正するといったことが可能でしたが、ブロックチェーンを利用したプログラムで同様のことを行うのは非常に困難です。

ブロックチェーン上に実装されたプログラムはコードの正当性を確認するのが困難であり、プログラムの記述内にミスがある場合はハッカーに脆弱性を突かれる可能性もあるでしょう。また、スマートコントラクトは一度実行した契約を無効にすることができないため、契約の実行中に起きた問題に対して柔軟に対応するのは難しいのが現状です。結果として、利用者は契約の前にスマートコントラクトのコードを入念に検証する必要があります。

イーサリアム (ETH) とICO

ICO (Initial Coin offeringの略称) とは、企業や個人が独自の仮想通貨やトークンを発行することで資金調達を行う方法のことです。イーサリアムにはこのICOを行いやすくする仕組みがあらかじめ備わっています。

ここではイーサリアムとICOとの関係性を説明した後、ICOのメリットやデメリットを説明していきます。

イーサリアム (ETH) とICOの関係

イーサリアムとICOの関係性を説明する前に、まずはICOの仕組みを知っておきましょう。

資金調達が必要な企業や個人がインターネット上にホワイトペーパーと呼ばれる事業計画書のようなものを公開し、独自の仮想通貨やトークンを発行します。その後、その事業の将来性に賛同する投資家がその仮想通貨やトークンを購入することで、ICOを行った企業や個人に資金が集まるという仕組みです。

近年では上記で説明したICOの多くがイーサリアムのプラットフォーム上で行われています。その理由は主に2つです。

1つ目の理由は、イーサリアム自体がICOによって実現したプロジェクトであるということです。リリース時のイーサリアムの価格は1ドル未満でしたが、2021年5月現在においてイーサリアムの価格は30〜40万円台で推移しています。そのため、早期にイーサリアムのICOに参入した投資家は現在、イーサリアムによって莫大な資産を得たと考えられます。

2つ目の理由は、イーサリアムに新たな仮想通貨やトークンを発行する機能が備わっていることです。実際に独自の仮想通貨やトークンを発行しようとすると多くの手間やコストがかかりますが、イーサリアムを利用することでその手間やコストを省くことができます。また詳しくは後述しますが、イーサリアム上で発行されたトークンは共通の規格にのっとったもののため、取引や保管がしやすいといったメリットもあるのです。

ICOのメリットやデメリット

ICOのメリットはプロジェクトを発表する側とそれに投資する側の双方に存在します。プロジェクトを発表する側は短期間で資金調達ができる点が、投資者側は簡単に投資でき、かつ多額のリターンを得られる可能性がある点がメリットです。

通常、新規株式公開 (IPO) には、事業の発足から最低でも数年の時間と上場するための手間が必要です。また、資金調達を行えるのは国内の投資家からに限られます。一方ICOであれば、そうした手間や時間をかけることなく、世界中の投資家から資金調達を行うことが可能です。また投資家の側から見ても、世界に存在する将来有望なプロジェクトに対して簡単に投資できるという魅力があります。

実際に、ICOで誕生したイーサリアムの価格は数年で数百万倍にもなりました。ただし、こういった事例が投機的な面を招いていることも否めません。

ここまでICOのメリットについて説明してきましたが、デメリットも存在します。

プロジェクトを出す側のデメリットは、競合が多い点や今後の法整備が不透明な点が挙げられます。IPOを比較して簡単に参入できる分、それだけ説得力のあるホワイトペーパーを作成することが必要です。またICOに限りませんが、仮想通貨の分野は今後の法整備によって先行きが大きく左右されます。

投資家側のデメリットはトークンの価格に対してプロジェクト側が義務や責任を負わないため、投資したトークンの価格が0円になってしまい大きな損失を負う可能性が存在する点です。また、最初から詐欺のようなプロジェクトで投資家から資金をだまし取ろうとする人物や団体が存在することも問題となっています。

現在ICOに関して明確な法的整備がなされていないため、プロジェクト側と投資家側の双方に大きなリスクがあることを今後ICOに参加する方は覚えておく必要があるでしょう。

ERC-20トークンとは

ERC-20とは、イーサリアム上で発行されるトークンの標準規格のことです。イーサリアムが誕生するまで、ICOで発行されるトークンの規格はバラバラで、それぞれのトークンごとに対応した環境を用意する必要がありました。しかし、イーサリアムがERC-20という共通の規格を用意したことで、トークンの管理に必要な手間が激減したのです。

ERC-20トークンの具体的なメリットは、異なるトークン同士であっても簡単に取引できる点です。トークンの規格がバラバラだと保有しているトークンごとに対応したウォレットを用意する必要があります。しかし、ERC-20に対応したトークンであれば何種類であってもひとつのウォレットで管理することが可能なため、より気軽にICOに参加したりトークンを取引することができるようになりました。

ただし、現状では問題もあり、ERC-20トークンを誤ってコントラクトアドレスに送ってしまうユーザーがいることで、多額のERC-20トークンが出金不可となる事態も発生しています。こうした誤送金を防ぐための新たな規格としてERC-223が考案されていますが、ERC-20と互換性がないことから実現までは時間がかかるでしょう。

イーサリアム (ETH) が発行される仕組み

イーサリアムが発行される際のコンセンサスアルゴリズムとしては、PoW(プルーフ・オブ・ワーク)が採用されています。しかしPoWには問題もあり、その対策として2021年5月現在、イーサリアムはコンセンサスアルゴリズムをPoS(プルーフ・オブ・ステーク)へ変更している最中です。それぞれの仕組みについて見てきましょう。

現在のコンセンサスアルゴリズムはPoW

現在イーサリアムに採用されているコンセンサスアルゴリズムであるPoWでは、送金やスマートコントラクトの実行といった取引の際に必要な計算や検証をいち早く完了させた人に対して報酬が支払われます。

この承認作業のことをマイニングと呼びますが、イーサリアムやビットコインのような人気が高い仮想通貨のマイニングは競争率が高く、性能の高いコンピューターを長時間稼働させ続けることでようやく大きな利益を出すことができます。しかし、高性能なコンピューターを長時間稼働させ続けるということは、電力を大量に消費している、つまり環境に対して悪影響であるという問題があるのです。

将来的にはProof of Stake (PoS) へ移行 (300)

上記で説明したPoWの問題を受けて、イーサリアムの開発元はコンセンサスアルゴリズムをPoWからPoSに変更する計画を発表しました。

イーサリアムがPoSに移行する一番の理由は、先述したようなマイニングによる莫大なエネルギー消費をカットすることです。また、資本力のある企業が高性能なコンピューターを揃えて電気代の安い国で計画的にマイニングを行うことによって、マイニングの報酬を寡占しているという現状もあります。これは、非中央集権的なネットワークを構築するという仮想通貨の理念から外れてしまった状態だと言えるでしょう。

これらの問題はPoSに移行することで解決可能です。実際に2020年の12月にはPoSへの移行の第1段階であるビーコンチェーンの実装が開始されています。PoSへの移行は早くても2021年末までかかる見通しですが、移行が完全に完了すればイーサリアムのマイニングは完全に終了します。

Proof of Stake (PoS) の仕組み

PoWは、取引の検証作業をする際に必要な膨大な量の計算を完了させた最初のマイナーに対して報酬が支払われる仕組みです。

一方、PoSはイーサリアムのネットワーク上に預け入れた資産の量に応じて報酬の量が決定され、支払われます。取引を承認する際に計算量を競う必要がないため、PoWと比較して消費電力を大幅に下げることができるのが特徴です。ネットワーク上に資産を預け入れることを「ステーキング」と言い、イーサリアムのステーキングは32ETHから参加することができます。

イーサリアム (ETH) の仕組みまとめ

イーサリアムはビットコインに次いで時価総額2位になるなど、仮想通貨市場の枠組みを形成してきた経緯があります。

特にブロックチェーンを利用したスマートコントラクトは画期的な仕組みであり、その機能はもはや仮想通貨の取引だけでなく、私達の生活に入りこんでくるほどイノベーションを起こす可能性を秘めています。また、スマートコントラクトによる管理者不要の契約や取引が今後盛んになれば、あらゆる業界で低コストが進む可能性があるでしょう。

また、ICOによって発行された多くの仮想通貨やトークンは、イーサリアムのプラットフォームから生まれています。今後のICOでもイーサリアムが利用され続けると考えて問題ないでしょう。

ただし、マイニングにかかる消費電力などの課題も存在します。しかし、今後のコンセンサスアルゴリズムの変更によりマイニングが終了するため、上記の問題も遠くないうちに解決される見通しです。

以上のことからイーサリアムは将来性に長けている仮想通貨であり、長期的に投資する価値があると言えるでしょう。また、イーサリアムに投資をしなくとも、今後の暗号資産市場を予想する上でイーサリアムの動向は欠かせない存在となっています。イーサリアムの仕組みを理解することで、今後の動向からどういったことが起こるのか予想しやすくなるはずです。

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