ネム (NEM/XEM) とシンボル (XYM) とは
シンボル (XYM) とは
シンボルとは、2021年3月に実施されたネムの大型アップデートによって誕生したプラットフォームの名称です。個人向けの側面が強かったネムのブロックチェーン技術を、エンタープライズ向けにも提供することを目的に開発されました。2019年から開始された大型アップデートのプロジェクトでは、当初「カタパルト」と呼ばれていましたが、その後「シンボル」に変更されています。
シンボルで利用される内部通貨の名称は「ジム (XYM) 」です。しかし、国内の取引所などでは「シンボル (XYM) 」と表記されることが多いようです。
プラットフォーム「シンボル (Symbol) 」の特徴
シンボルの特徴としては、パブリックチェーンとプライベートチェーンのハイブリッドチェーンとして設計されていることがあります。パブリックチェーンは、中央管理者が存在しないことや取引記録を誰でも閲覧できる透明性の高さがメリットですが、処理速度が遅いことや個人情報保護の観点からは問題があるといったデメリットがあります。プライベートチェーンはその逆で、トランザクションの承認にかかる時間が少なく、個人情報などのプライバシーを保護することが可能ですが、管理者が限定されることによる弊害があります。シンボルのハイブリッドチェーンであれば特別なシステムの構築を行うことなく、両者に適した場面でそれぞれの機能を提供することが可能です。
また、ハイブリッドチェーンを採用していることから、異なるブロックチェーン間でのトークンの交換である「クロスチェーンスワップ」を、第三者を介することなく行うことができます。他にも、シンボルはネム既存の技術を用いつつ、エンタープライズ向け機能の追加やセキュリティの強化、処理速度の向上が実施されているのが特徴です。
追加されたエンタープライズ向けの機能の1つとして、「アグリゲートトランザクション」が挙げられます。アグリゲートトランザクションとは、複数のトランザクションを1つにまとめて処理することで、第三者の仲介を必要とせずにトラストレスな取引をより高度な形で実行できる機能のことです。
またセキュリティ面では、マルチシグの強化が行われました。マルチシグとは1つのアカウントでの送金に対して、複数人の署名が必要なしくみのことです。もともとネムにはマルチシグが備わっていましたが、シンボルではマルチシグを複数構造で設定することができます。たとえば、「3名中3名が署名(3of3)」した後に「4名中2名が署名したら送金(2of4)」といったように設定でき、企業の各部署で確認して最後に責任者が承認するような使い方が可能です。
ネム (NEM/XEM) とシンボル (XYM) の関係性
ネムは「非中央集権的な経済の仕組みを作ること」を目的とした、ブロックチェーンプロジェクトです。2015年にリリースされたネムは、これまで主に個人開発者向けに提供されていましたが、シンボルアップデートの目的は企業や政府に対してブロックチェーンの技術を提供することでした。
ここで注意しておく必要があるのが、シンボルは今までのネムとは別の新しいブロックチェーンであるということです。同様に、ネムの内部通貨であるゼム (XEM) とシンボルの内部通貨である (XYM) も異なる通貨です。つまり、今後ネムのプロジェクト内において、ネムのブロックチェーンとシンボルのブロックチェーンが共存していくこととなります。
ただし、スナップショットまでにゼム (XEM) を一定額以上保有していた人は、保有していたゼム (XEM) と同額のジム (XYM) をオプトインで受け取ることが可能です。オプトインについては次の見出しで詳しく説明します。
ネム (NEM/XEM) はオプトインでシンボル (XYM) を受け取ることができる
ネムのユーザーでゼム (XEM) を保有している人は、オプトインで保有しているゼム (XEM) と同量のシンボル (XYM) を受け取ることができます。シンボル (XYM) を受け取るためのオプトインには2通りの方法があり、1つはシンボルのメインネットがローンチするまでにオプトインの申請を行う方法で、もう1つはローンチ後にオプトインの申請を行う方法です。2021年6月現在、シンボルメインネットのローンチは完了しているので、ここでは後者の方法について解説していきます。
シンボルがローンチした後にオプトイン申請をするには、スナップショット以前にゼム (XEM) を保有していたことが条件となります。スナップショットとは、シンボルに引き継がれるゼム (XEM) の保有量が確定する日時です。具体的なスナップショットの日時は「2021年3月12日の日本時間9時50分頃、ブロック高3,105,600」でした。[1] NEM Japan, Symbolのオプトイン, 2021年6月7日参照ブロック高とは、そのコインが発行されてから生成されたブロックの数のことです。
上記のスナップショット以前に100XEM以上の残高があった人は、シンボルメインネットのローンチ後にもオプトインの申請を行うことができます。この方法による申請期間は、ローンチから6年間です。なお、期間中にオプトインの申請が行われなかった場合、請求されなかったシンボル (XYM) は、コミュニティの投票によってバーン (焼却) されるかどうかが決定されます。
また、取引所でゼム (XEM) を保管していた場合、取引所がオプトインの仕様に沿って自動的にシンボル (XYM) の付与を行ってくれます。付与が行われる期間などについては取引所ごとに違いがあるので、自分が利用している取引所からのアナウンスを確認するようにしましょう。
2021年6月現在、CoincheckとbitFlyer、GMOコイン、Huobi Japanはスナップショット後のオプトインを行うと発表してはいるものの、詳細な日時や配布方法については検討中とのことです。
- 参考 : 【Symbol】サービスの再開について|Coincheck
- 参考 : Symbol(XYM)の配布の詳細を教えてください。|bitFlyer
- 参考 : Symbolはいつ付与されますか|GMOコイン
- 参考 : 【3/15更新】Symbol(XYM)への対応方針について|Huobi Japan
シンボル (XYM) を購入できる取引所
2021年5月現在、シンボル (XYM) を購入できるのはZaifのみであることを述べる
ネムの取り扱いがある取引所であればオプトインには対応していますが、2021年6月現在、シンボルを販売している国内取引所は、Zaif (ザイフ) のみです。2021年5月17日にOrderbook trading (ユーザー同士の取引所) での取り扱いが開始され 、その2日後の5月19日には販売所での取り扱いも開始されました 。また、2021年6月時点におけるZaifのシンボル取引量は世界1位で、シンボル全体のおよそ3割以上がZaifで取引されています。[2] coinmarketcap, Symbolの取引量, 2021年6月11日参照
また、シンボル (XYM) を取り扱っている海外取引所にはKuCoin (クーコイン) があります。こちらもシンボル (XYM) の流通量が比較的多いため、海外取引所でシンボル (XYM) を取引したい場合は、KuCoinを利用するとよいでしょう。
シンボル (XYM) 今後の見通し
シンボルはエンタープライズブロックチェーンとして公開されたことから、今後は決済以外にもビジネスなどで活用されることが望まれています。実際に、リトアニア中央銀行で世界初となるデジタルコレクターコインが発行されたり、ケンタッキーウィスキーファンドをトークン化したりなど、シンボルが導入される事例は増えてきています。また、現在すでにシンボルの進出が決まっている領域として、DeFi (分散型金融) とNFT (非代替性トークン) もあります。
2021年4月初旬には、シンボルを基盤としたNFTプラットフォームである「NEMBER ART」のテストネットが公開されました。[3] Twitter, NEM公式Twitter, 2021年6月11日参照また、同年5月にはネムは、サッカー選手のデジタルコレクタブルをシンボル上で発行することを発表し、本格的にNFT市場に参入することを示しています。現時点では、リバプールのレジェンドOBであるケニー・ダルグリッシュ氏とマンチェスター・シティに所属する現役のスター選手、リヤド・マフレズ選手のデジタルコレクタブルが発行されることが決まっています。[4]
また、ネムは2021年3月に、ブロックチェーンを利用したインフラを構築する「Fantom Foundation」との提携を発表しました。具体的な取り組みはまだ発表されていないものの、シンボルが今後においてDeFiへの参加をより円滑に進めるための提携であるとネムは述べています (参考:NEM公式Twitter) 。
ただし、DeFiやNFT市場は既にイーサリアムが大きなシェアを占めており、イーサリアムとどのような差別化を図れるのかがシンボルの今後における課題と言えるでしょう。
ネム (NEM/XEM) とシンボル (XYM) まとめ
シンボルとはネムの大型アップデートによって誕生したプラットフォームの名称で、処理速度の向上やセキュリティの強化によってエンタープライズ向けブロックチェーンとなっているのが特徴です。また、シンボルの内部通貨は「ジム (XYM) 」と呼ばれています。
シンボルはネムとは別のブロックチェーンで、現在はネムとシンボルのブロックチェーンが共存している状態です。内部通貨も異なりますが、ネムの内部通貨「ゼム (XEM) 」を保有している場合、オプトインでジム (XYM) を受け取れる可能性があります。
シンボルは、今後その特徴やしくみを活かして、ビジネスの現場などで活用されることが期待されています。2021年5月には国内の取引所でもシンボルの取り扱いがスタートしました。興味のある方は、シンボルの動向をチェックするようにしましょう。