イールドファーミングのリスク

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眞船 美香 (Mika Mafune)
この記事の編集者
眞船 美香

暗号資産投資家でもあり、Head of Owned Media Divisionでもあります。オーストラリアのシドニーより、海外の暗号資産に関する情報や英語文献をもとに日々リサーチを行なっています。 2012年から共同通信社で宮内記者会の記事インターンとして参画し、その後は小学館のCanCamで編集アシスタントを経験します。大学卒業後は、メルセデス・ベンツ日本の文献課に所属し、車種カタログやそのほか英語文献などの添削・編集業務を行いました。2017年に電通へ入社し、海外ネットワーク強化のためのマーケティング・コミュニケーションを担当し、ウェブ電通報をはじめとするオウンドメディアに日本語と英語の両方で記事執筆・投稿を行いました。

編集ポリシー
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イールドファーミングのリスクとは

近年人気を集めているイールドファーミングですが、イールドファーミングのサービスを利用するにあたりいくつかのリスクがあることも事実です。

イールドファーミングのリスクは主に以下の9つが挙げられます。

  • 中央集権型モデル
  • ガバナンスの不分散
  • 法整備、規制
  • ハッキング
  • 詐欺
  • コンポーザビリティ
  • バブルの終了
  • 変動損失
  • スリップページ

ここでは組織に関するリスク、ハッキングと詐欺、構成可能性のリスク、価格に関するリスクの4つに分けて説明していきます。

組織に関するリスク

イールドファーミングを提供するDEX (分散型取引所) には、完全に分散化しきれていないことがあります。

たとえばDEXでは、運営側が管理者キーを持つことにより発生する一方的なコントラクト変更などをなくすために、多くのDeFiサービスではガバナンストークンをユーザーに分配し、コミュニティに意思決定権を移譲しています。

しかしこのガバナンストークンを一部の大口ホルダーが保有すると、投票権などに偏りが生じてしまう可能性もあるため、ガバナンスを利用した分散化はバランスがとても重要であることがわかります。

またもうひとつ分散化しきれていない要因として、イールドファーミングで使用されるUSDTやUSDC、WBTCといったステーブルコインが挙げられます。

これらステーブルコインは、中央集権型組織に発行されているため、発行元の組織が不祥事や破綻などすればユーザーも少なからず影響を受ける可能性があり、イールドファーミングで資産運用している場合は資産を失う可能性もあります。

2021年2月にUSDTを発行するテザー社が、米ニューヨーク州司法当局により説明虚偽の疑いとして1850万ドル (約19億5千万円) の罰金をかけられる事件がありました[1]

triangle。こういった事件などに関連してUSDTやUSDC保有者が規制当局からアドレスを凍結されてしまうなどの処置がある可能性はゼロではありません。

仮想通貨の法整備はまだ不十分であり、グレーゾーンな部分もあるので、特にステーブルコインなどの発行元の動きには注意しておくとよいでしょう。

ハッキングと詐欺

イールドファーミングを含むDeFiサービスは、基本的にコード監査を受けてリリースされているためセキュリティの安全性は高いと言えますが、ハッキングや詐欺に合うリスクはゼロとは言えません。

過去に「TheDAO事件」といったスマートコントラクトがハッキングされる事件が起きています。2020年8月には、イーサリアム (ETH) プットオプションの脆弱性の悪用により4000万円ほどの資産が奪われたケースもありました[2]

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ハッキングされた取引所はセキュリティ面を向上させて技術改良が行われますが、ハッキングとセキュリティのどちらも日々改良がされるため、あらかじめハッキング等のリスクを考え余剰資金でサービスを利用するなどのリスク対策を行いましょう。

またハッキング以外にフィッシングサイトなどを用いた詐欺も見られます。

DeFiサービスはオープンソースであるため、多少の開発技術があれば簡単に複製が可能であり、フィッシングサイトなどが作られてしまいます。最近ではDeFiサービスの中でも知名度のあるUniswapのフィッシングサイトなども存在し、有名どころのサービスと言っても油断はできません。

そのためサービスの利用を開始する前に、ホームページに違和感を感じたり、不信に思った場合はいったん中止しましょう。自分で検索すると間違ったものなのか判断がつきにくい場合もあると思います。そういった時は、信用できるメディアが取り上げている記事などからリンクを経由して利用するとよいでしょう。

イールドファーミングが行える主要のDEX (分散型取引所) の公式ホームページへのリンクです。是非こちらを参考にしてください。

構成可能性のリスク

DeFiシステムの魅力ともいえるコンポーザビリティですが、これに付随する問題があります。コンポーザビリティとは、構成可能性とも呼ばれ、外部のさまざまなサービスと連携し組み合わせることで形成するDeFiの原則ともいわれる考え方を指します。

これは、あるサービスで問題が起きると外部サービスにも悪影響をあたえてしまい、ドミノ倒しのように問題が次々と波及していく可能性があります。

そのためイールドファーミングなどのDeFiサービスを利用する際は、DeFi市場全体の動きにも注目することが大切といえるでしょう。

価格に関するリスク

最後はバブルの崩壊、変動損失、スリッページによる価格に影響が考えられるリスクに関してご紹介します。

バブル崩壊は、先行者利益が有利なイールドファーミングにおいて参加者が増加すると収益性がおち、一気にブームが冷めて急落する可能性があります。DeFiサービスに投機熱が先行すると、実際の価値以上の価格がつけられているものも中にはあります。この投機熱が冷めたタイミングがバブル崩壊となる可能性があるため、イールドファーミングを行う際は市場の動向を常に意識して使用するようにしましょう。

また変動損失は、イールドファーミングの流動性プールに預けた時の仮想通貨価格が変動することで発生する価格差を表します。つまり、流動性プールに流動性を提供したときに預けた資産の価格変動がが大きければ大きいほど、損失にさらされることになります。

具体的な例を紹介します。

1ETHと100DAIを流動性プールに預けるとします。この時点で1ETHは200米ドルの価値を持ち、1ETH=100DAIです。さらにプールには他の参加者も集まり、合計10ETHと1,000DAI、流動性の合計は10,000です。この時のプールにおけるシェアは10%になります。

そしてイーサリアム (ETH) の価格が400DAIまで上昇したとします。プール内の流動性は変わらず10,000のままですが、イーサリアム (ETH) が400DAIになった場合、プール内にどれだけのETHとどれだけのDAIがあるかで比率が変わります。アービトラージ取引の働きにより、プールには5ETHと2,000DAIが残ったと仮定します。

この時点で引き出そうとした場合、10%のシェアがあるため、0.5ETHと200DAIを合計400米ドルとして引き出すことができます。もともと200米ドルを預けて400米ドルになったため200米ドルの利益を得たことになります。

一方、流動性プールに預けず、1ETHと100DAIをそのまま保有していた場合の利益は500米ドルです。よって、そのまま保有していた場合に得ることができた500米ドルから実際に受け取った400米ドルを引いた100米ドルが変動損失ということになります。

最後にスリッページです。DeFiサービスではスリッページによる価格変動リスクが比較的低いといわれていますが、イールドファーミングを行う際もスリッページによるリスクを考慮して価格の注文を行うとよいでしょう。

なおスリッページとは、自分が注文した価格と実際に約定した価格のずれのことを指します。

イールドファーミングリスクのまとめ

イールドファーミングは効率的に資産運用ができ、利回りも伝統的な金融サービスと比較してかなり割高になっている魅力的なサービスです。

一方でまだまだ未熟な仮想通貨市場においてリスクとなる点も多く存在することも事実です。DeFiの仕組みや、提供されるサービスの特徴とリスクを知っておくことでリスクヘッジがしやすくなるでしょう。

大切な資産を失うことのないよう、イールドファーミングを上手に使って資産運用していきましょう。

情報ソース・引用元一覧

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眞船 美香
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暗号資産投資家でもあり、Head of Owned Media Divisionでもあります。オーストラリアのシドニーより、海外の暗号資産に関する情報や英語文献をもとに日々リサーチを行なっています。 2012年から共同通信社で宮内記者会の記事インターンとして参画し、その後は小学館のCanCamで編集アシスタントを経験します。大学卒業後は、メルセデス・ベンツ日本の文献課に所属し、車種カタログやそのほか英語文献などの添削・編集業務を行いました。2017年に電通へ入社し、海外ネットワーク強化のためのマーケティング・コミュニケーションを担当し、ウェブ電通報をはじめとするオウンドメディアに日本語と英語の両方で記事執筆・投稿を行いました。

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