- チャットサービス大手Telegramが新トークンのグラムを開発
- グラムを使ったICOは約17億ドルの調達に成功
- 米証券取引委員会による違法性の指摘により、グラムの次の計画が進んでいない
仮想通貨の情報集めに有用なツールであるTelegramですが、最近ではTelegram自体が新しいトークンを発行し、ICOを開いたことで話題になっています。これを読めばTelegramのICOの基本的な情報がわかるでしょう。
Telegram (テレグラム) のICOとは?
TelegramはICOで史上最大の約17億ドルの調達に成功しました。Telegram共同設立者ニコライ・デュロフ博士は、新しいブロックチェーン開発プロジェクトを進めており、そのブロックチェーン上にある新トークンがグラムです。
セキュリティや高速決済性能をウリとしたグラムは、2018年にICOで世界最大規模となる約17億ドルの売上を記録しました。世界的なチャットサービスであるTelegramが発行したトークンとして今も話題です。
Telegram Open Network(TON)とは?
Telegram Open Networkとは、Telegram独自開発によるブロックチェーンを使った決済プラットフォームです。プライバシーなどの安全性と決済の速さの両立を目指しており、ビットコインやイーサリアムとの差別化も目標です。
クレジットカードよりも送金手数料が低いとして、少額決済のマイクロペイメントにも使えるとTelegram側はアピールしています。
TONはイーサリアムのような既存のブロックチェーンをベースとせず、オリジナルの仕組みを持っているため、「第三世代のブロックチェーン」という評価もあります。TON上にあるトークンがグラムであり、資産価値としての将来性だけでなく、さまざまな場面でキャッシュレス決済に役立つとして注目を受けているようです。
ICOトークンの使用用途
今回のICOトークンの名称はグラムであり、独自開発のブロックチェーンを使用しているため使い道はさまざまです。
たとえばグラムの取引内容をチェックし、正当なものを承認する役目にバリデーターというポジションがあります。取引の承認作業やグラムの新ブロックおよびトークン生成のために、バリデーターは「ステークス」として一定のトークンは預けます。
またグラムの取引やスマートコントラクト処理のクリアが済めば、関わったバリデーターが手数料を受けれる仕組みです。
ほかにもTONから提供のアプリ内でサービスや商品への支払いにグラムを使うなど、さまざまな独自の使い道があります。バリデーターなどの協力を得ながら発行や運営を進めるのがグラムのスタンスです。
Telegram (テレグラム) ICOトークンの開発について
TON プロキシ
TONプロキシとは、個人情報やIPアドレスなどプライバシーに関する情報を隠す機能です。第三者からハッキングを受け、過去に見たサイトの履歴などをのぞかれないために役立ちます。
グラムに関わるユーザーが安心してインターネットを使えるように配慮したのがTONプロキシです。
TON Storage
TON Storageはファイルの分散管理や保存ができるシステムです。あらゆるサーバーからアクセスできるドロップボックスと考えましょう。
分散管理なのでハッキングは見つかりやすく、情報漏れのリスクを抑えています。TON Storageにある情報は暗号でできており、他人がシステムの中身を盗み見てしまう心配もありません。
TON Services
TON Servicesは、分散型アプリケーションを作るためのプラットフォームであり、開発者向けのプログラムです。TONやTelegramと直接関係しない第三者がシステムを開発できます。
開発者はTON Servicesを通してシステムを作ると、利用者の手数料や商品購入代金などをグラムでもらえるため、ビジネス面での活用も望めるでしょう。
TON DNS
TON DNSはアカウントやアプリケーション、ノードなどに固有名を割り当てるシステムです。生まれた子供に名前を与えるような識別システムと考えればよいでしょう。
TONサービスのアドレス入力や別のユーザーとのリンク先の共有もできるなど、柔軟な使い方が望めます。
TONペイメント
TONペイメントは、グラムの正式な決済手段としての活用を目的にしたシステムです。TONの決済システムではグラムに限らず、ほかの仮想通貨も送金可能なので、多くの利用者への対応が期待できます。
ユーザーのウォレット同士による送金・出金に限らず、関連サービスへの支払いにも使えるなど、キャッシュレス決済の発達にもつながりそうです。
TON Blockchain
TONのブロックチェーンにはメインであるマスターチェーンに加え、92にも及ぶサブチェーンもあります。数多くのチェーンを使って複数のサーバーにデータをわける「シャーディング」ができ、処理の高速化に役立ちます。
シャーディングができれば、ブロックの空き容量に応じたデータ処理のスピードを示すスケーラビリティの向上にも期待がかかります。
2018年に17億ドルのICOを成功
Telegramは2018年に開いたICOで世界最大規模の調達額を果たしました。2017年から新トークンに関わるプロジェクトをはじめており、2018年の2~3月に行ったICOで約17億ドルの調達に成功しました。日本円に換算すると約1,800億円に達します。
TelegramによるICOには100万ドルの資産または20万ドル以上の年収が参加条件でした。一般の人には取りつきづらい条件でしたが、最終的には165人の参加者が集まりました。
この話題は仮想通貨業界に限らず、世界中でニュースとなり、Telegram及びオリジナルトークンであるグラムの注目度を高めています。仮想通貨取引所への将来的な上場を望んだ人もいるのではないでしょうか。
なぜTelegram (テレグラム) のICOは人気なのか?
TelegramのICOが好評を得た背景には、開発企業の世界的な知名度と、トークンの安全性です。とくにプライバシー保護の仕組みへの高評価が多い状況です。この章ではTelegramの人気の背景を考察します。
プライバシーの安全性がある
グラムの強みはプライバシーの安全性です。Telegramのチャットサービスも厳重な個人情報保護でユーザーの共感を得ており、その経験をグラムに色濃く反映させています。仮想通貨の課題であるセキュリティ面において妥協のないグラムの姿勢が人気トークンである理由です。
Telegram自体も特定の人だけでプライベートなチャットができる「シークレットチャット」など、プライバシーを尊重した機能があります。特にシークレットチャットは、二人きりでの会話中に片方がメッセージを消せば、もう片方のサーバーから見た画面でも同じメッセージが消えています。
このように本格的な情報保護の機能がTelegramの強みであり、その方向性に従った開発を受けたグラムもプライバシーを守るための性能を高めています。以上がグラムの需要を高めている要因です。
次のTelegram (テレグラム) のICOはいつ?
Telegramが開く次回のICOは、現時点で予定がありません。しかしICOが未定である背景には、グラムを違法とする声が挙がります。TelegramのICOに関する今後の予定やその理由に迫ります。
Telegram (テレグラム) のICOが遅れる理由
TelegramのICO計画が遅れているのは、グラムが違法であるという指摘をアメリカのSECが行っているからと考えられます。
SECはアメリカ証券取引委員会とも呼び、アメリカにおける株などの有価証券の公正な取引をチェックする連邦政府機関です。2019年10月11日にSECがグラムを違法な有価証券として取引の差し止めを求めました。
SECによると、グラムは有価証券であり、Telegram側が取引に必要な登録をせずに売っていると主張を述べています。これによりTelegramは10月31日にTONのメインネットを立ち上げる予定でしたが、2020年4月に延期されました。
Gramは違法なのか?
グラムを違法とする結論はまだ出ていませんが、SECから不当な有価証券と指摘を受けた以上、TelegramがICOなどの次の展開に踏み出せないことも事実です。
SECはグラムの開発に関わったTelegram側に対し、ICOなどで調達した金額の使い道などを示すように求めていますが、回答は得られていません。
一方でTelegram側は2019年11月12日に、SECはグラムに不適切な規制を行っていると反論しています。また1月6日には公式ブログでグラムを投資商品ではないとの主張を行っています。グラムの違法性をめぐる結論には、まだ時間がかかりそうです。
出典:https://telegram.org/blog/ton-gram-notice
ICO延期による市場への混乱
ICOが延期にいたったことで、グラムをめぐる市場も影響を受けています。グラムの動向は停滞中ですが、ICO時の話題から需要は衰えていません。
以上から、仮想通貨取引所を介さないセカンドマーケットにおけるグラムの取引が増えています。グラムが初回ICOの約3.5倍で売買されることもありました。このようにグラムの需要が高まった結果、大量のグラムを高値で売ることにより莫大な利益を儲けた人も見られます。
ICOから高い評判を受けながら、SECからの違法指摘により計画が停滞しているため、グラムをめぐる市場が混沌を極めています。
Telegram (テレグラム) のICOまとめ
世界的なチャットサービスであるTelegramは、TONという独自ブロックチェーンとそれにともなう新トークンのグラムを開発し、ICOで約17億ドルもの調達に成功しました。
しかしSECからグラムが違法であるという指摘を受け、今後のICOなどの見通しが立っていません。TelegramもSECに反論を行っており、グラムの先行きは不透明です。この問題が一日でも早く解決することを願います。