- 日本のICO規制は法整備の途中
- 規制の目的は仮想通貨の健全な発展
- 国際的な枠組みも整備が進んでいる
日本および世界各国の多くは、ICO (Initial Coin Offering) を規制したり、規制に向けて法整備を行ったりしています。ICOは仮想通貨を開発するための資金調達の方法ですが、さまざまな問題や懸念事項を抱えています。そこで、ICOとはどのようなものか、なぜICOの規制に向けて各国が動いているのか、また、日本や他の主要国のICO規制状況等について、詳しく説明していきます。
仮想通貨ICO規制の現在の状況〜日本〜
ICO(Initial Coin Offering)とは
ICOとは、新しい仮想通貨を開発するために出資を募る方法です。ICOに似た用語でIPO(Initial Public Offering)があります。IPOとは、株式会社が上場する際に、新規株を公開して株主を募り、資金調達を行う方法です。
ICOは資金調達の新しい方法で、出資者は新通貨を安く取得できる等のメリットを享受できます。
ICOのメリット
ICOの最も大きなメリットは、資金調達が簡単に行えるということです。
IPOで株式上場する際には、法律で定められた厳しい条件があるため、膨大な時間と労力がかかります。一方ICOは、インターネット上で資金調達ができ、規制も少ないことから、IPOに比べると容易に資金調達ができます。
ICOのデメリット
ICOは必ずしも成功するとは限りません。ICOで資金調達するには、投資家が納得するだけの魅力を打ち出す必要があります。魅力がなければ資金が集まらず、ICOは失敗します。
さらにICOがうまく行ったとしても、開発が順調に進むとは限りません。投資した資金が回収できないリスクもあります。また、マネーロンダリングや組織犯罪の資金増大を目的としてICOを利用される恐れもあります。
金融庁の対応・方針
2018年9月14日の記事執筆時点において、ICOを規制する法律はありませんが、法規制に向けて準備を行っています。現状の方針としては、海外ICOへの参加を禁止をする方向性で検討されているようです。
その一連の動きと思われる金融庁の対応として、2018年3月、仮想通貨取引所バイナンスに対して「改正資金決済法に基づく警告」を通告しました。
理由は、以下の通りです。
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金融庁が定める仮想通貨交換業者として無登録のまま日本で営業したこと
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口座開設において本人確認をしていないこと
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マネーロンダリング対策がされていないこと
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投資家に損害が出る恐れがあると判断したこと
ICOは国や法律の規制が及びにくいことから、マネーロンダリングや組織犯罪の資金源に使われる懸念があります。金融庁がどのような法規制を実施するか、今後も注目が必要です。
仮想通貨ICO規制の現在の状況〜世界各国〜
アメリカ
アメリカでは、仮想通貨が証券に該当するかどうかという検討が重ねられています。証券に該当するとされれば、米証券取引委員会(SEC)による規制の対象となり、ICO主催者はICOに参加する全ての投資家が法的要件を満たすことを報告する義務を負うなど、大きな影響が発生します。現段階で結論は出ていませんが、今後、アメリカでのICOは大きな規制を受ける可能性があります。
カナダ
カナダでは、カナダ証券管理局(CSA)がICOを証券取引法を適用することを発表しました。現状ICOへの明確な規制は行われていませんが、監督する必要性を認めています。
ロシア
2017年2月12日に情報技術・通信省から出された文書により、ICOを行うにはライセンスの取得が義務付けられました。ICO参加者も、出資の上限額を定める等の規制があります。
中国
中国は、ICOを含めた仮想通貨取引全てを禁止しています。ただし、今後は規制が緩和されるとの情報もあり、中国当局の動向が注目されています。
韓国
韓国も、中国と同様にICOを全面的に禁止していますが、ICOの規制を緩和する見込みとの報道もあります。
ドイツ
ドイツはガイドラインを発表し、銀行法や投資法など、金融関連の既存の法律の枠組みの中でICOを認めています。
欧州連合(EU)
EUとして、ICOや仮想通貨を規制する規則や法律はありません。ICOは、危険性とともに、新しい資金調達方法として優れているとの意見もあります。EUでは会議を重ね、各国が足並みをそろえて対応しようとしています。
国がICOを規制したい理由
国がICOを規制する理由は、自国の法定通貨や国民、経済の保護が挙げられます。
不正なICOを罰する法律が存在しない可能性がある
仮想通貨については各国の法整備が追いついておらず、ICOの実施に制限が少ない状況です。そのため、犯罪が疑われる不正なICOがあったとしても、罰するための法律が存在せず、出資者に被害が発生する恐れがあります。
自国の経済保護
また、ICOに出資するためには、法定通貨を仮想通貨に両替する必要があります。そうなると、国の通貨が仮想通貨に流れ、経済に悪影響を及ぼす懸念があります。さらに、ICO主催者や真の目的などが不明瞭な場合も多く、マネーロンダリングや組織犯罪の資金源に利用されるというリスクも存在します。
これらの理由から、世界各国がICOに関する法整備を急いでいます。
2018年3月のG20で議論された内容は?
2018年3月19日と20日に、アルゼンチンの首都であるブエノスアイレスでG20が開催されました。世界規模の会合で初めて仮想通貨に関して議論され、注目が集まりました。
議題としては、マネーロンダリングの対応、虚偽の情報による風説流布の規制、仮想通貨取引所の規制、利用者保護などについてです。
マネーロンダリングの対応
マネーロンダリングは各国とも懸念事項としてとらえており、ICOの規制について各国の対応状況や、今後の計画について話し合われました。ICOを含む仮想通貨の匿名性に関して、どの国も犯罪組織の資金源とされることを懸念しています。
虚偽の情報による風説流布の規制
風説の流布や仮想通貨取引所の規制を行い、利用者を保護する必要があるとの見解も、参加国で共有されました。また、現時点では仮想通貨が世界の経済状況を脅かす存在には至っていない、という意見の一致を見ました。
今後の仮想通貨の動向や対応に関しては、注意して様子を見るという結論になり、今回のG20会議のみでは、世界共通のICO規制には至っていません。G20の議論を発端に、仮想通貨やICOの規制に関して、各国に持ち帰って法整備などが進められると予想されます。
まとめ
2018年9月14日の記事執筆時点において、日本はICO規制に向けて法整備を行っている段階です。そしてこれからもICOの規制状況は、国際情勢などに応じて刻々と変化していくと予想されます。
現時点において日本ではICOが合法で問題なくても、法律が整備されることで違法となり、処罰対象になるという恐れもあります。気付かないうちに違法な行為をしてしまわないためにも、ICO規制に関して常にチェックしておきましょう。