
分散型アイデンティティ (Decentralized identity) とはユーザーに迅速かつ容易に利益を提供するためのブロックチェーン技術の基礎概念である。これにより簡単なログイン、より迅速なクレジットチェック、スムーズなオンライン体験などが実現した。
ウェブサイト、電子商取引のハブ、ソーシャルメディア・プラットフォームの普及により、私たちは誰もがログインパスワード、ユーザー名の膨大なデータベースを抱えるようになった。これらのデータベースが増えるにつれ、パスワード・マネージャーの使用が一般的になり、ウェブサイトやサービスが効果的に私たちの身元をダブルチェックできるようになってきた。
一方その結果、エンドユーザーは、パスワードや二要素認証アプリケーションを紛失したり、スマートフォンにアクセスできなくなったりした場合に多くの面倒な操作が必要になった。
今日、オンラインでの取引プロセス全体がはるかに複雑になっている。しかしブロックチェーンの出現により、企業は顧客やエンドユーザーにより合理化された本人確認プロセスを提供できるようになった。多くのハードルを取り除き、有害なプライバシーやデータ侵害のリスクをユーザーに与えないという付加的なメリットも得られるようになったのである。
急成長中のソーシャルメディアが抱える課題
デジタルとソーシャルメディアは、今や世界中の人々の日常生活に欠かせないものとなっている。45億人以上がインターネットを利用しており、ソーシャルメディアの利用者は38億人の大台を超えた。 一方、データの悪用が依然として大きな問題となっている。これは、デジタル経済のすべての利害関係者 (個人、企業、政府) にとって大きな問題だ。
今日のデジタル・アイデンティティ・フレームワークは中央集権的である。この方法はポータブルではなく、消費者が自分の個人情報をコントロールすることはできないため信頼性が欠落している。例えば、ソーシャルメディアサイトFacebook-Cambridge Analyticaではの数百万人のユーザーの個人情報が盗み出された。
個人情報の盗難、オンライン詐欺、データ侵害は毎年世界経済に何兆円もの被害を与えており、その数はデジタルサービスの利用が増えるにつれて増加傾向にある。これはデジタル化された世界の経済的利益を逃さないようにする上での重要な課題である。
DIDというソリューション
上記のリスクは、分散型アイデンティティ (DID) によって軽減できる。DIDを様々なアプリケーションに組み込むことで、ブロックチェーンユーザーは安全な分散型ブロックチェーンネットワーク上でデータや資産を取引・通信できるようになった。
デジタルの世界では自分が何者であるかを証明する方法が大変重要だ。特に企業にとっては、データ・セキュリティに多大なコストをかけずに運営できることは、消費者の信頼を得ることができるという価値に加えて、経済的なメリットとなる。他にも銀行には顧客のオンボーディングだけでも膨大な管理コストがかかっている。
しかしDIDを使用することで、すぐに効率化と継続的なコスト削減が実現する。これにより、銀行と大企業の両方にこれまで不可能だった経済のスケールを提供することができる。ベトナムのNguyễn Xuân Phúc首相は最近、第4次産業革命の一環として、仮想通貨とブロックチェーンを国家の優先事項のトップ5に挙げた。
ただし、データやプライバシー侵害の問題が全てなくなるわけではない。スマートフォン、コンピュータ、ラップトップを使う人が増え、ソーシャルメディアの利用者は2025年までに44億人に達すると予測されるが、残念ながらハッカーが個人情報を吸い上げ、オンライン上のすべての人の身元を危険にさらす機会は十分にあるだろう。
ブロックチェーンは今後もプライバシー保護のためのソリューションを提供し続ける。DIDは今後5年以内にブロックチェーンの主要なユースケースになると予想される。DIDは現状の中央集権型に代わる、より安全で、より速いネットワーク手段なのである。