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イーサリアム (Ethereum/ETH) とは

イーサリアムは、2021年現在ビットコインに次ぐ時価総額を誇る仮想通貨です。イーサリアムの大きな特徴として、ブロックチェーン上で契約を自動的に実行できる「スマートコントラクト」を構築できる点が挙げられます。ここでは、2015年にリリースされたイーサリアムが注目されている理由やビットコインとの違い、将来性などについて解説していきます。

編集:
橋爪 塁成 (Ruisei Hashizume)

イーサリアム (ETH) とは

ビットコインに次いで時価総額が高い仮想通貨のイーサリアム。その時価総額は、2021年5月の時点で約2兆9000億円です。

イーサリアムの市場における時価総額の占有率 (ドミナンス) は約18%ですが、時価総額3位の通貨は約4%です[1]

triangle。イーサリアムが他のアルトコインと一線を画していることがおわかりいただけるでしょう。

イーサリアム (Ethereum) とイーサ (ETH)

イーサリアムとは、ヴィタリック・ブテリン氏によって開発されたブロックチェーンプラットフォームの名称です。イーサリアムが誕生する以前、ブロックチェーンは送金に用いられることが主でした。しかしイーサリアムは、ブロックチェーンの仕組みを利用して分散型アプリケーション (DApps) を開発、実行できる機能を有しています。つまり、イーサリアムは単なる通貨ではなく、アプリケーションを構築するためのプラットフォームなのです。

イーサリアムのブロックチェーン上で分散型アプリケーションを開発したり利用したりするときは、ネットワークに参加しているコンピュータに対して開発者や利用者が手数料を支払う必要があります。

ブロックチェーンが機能する仕組みを思い出してください。イーサリアムやビットコインなどの仮想通貨のブロックチェーンのネットワークは不特定多数のコンピューターによって構成されています。そして、ブロックチェーン上で何らかの取引が実行されると、ネットワークに参加しているコンピューターのリソース (計算能力) が利用され、取引の承認が行われます。その際に、コンピューターのリソースを利用して取引を承認した人 (マイナー) に対し、報酬として手数料を支払うのがルールです。

イーサリアム内で支払われる手数料は、システムやアプリを動かすその性質から「Gas (ガス)」と呼ばれています。ガスは、イーサリアムの内部通貨であるイーサ (ETH) によって支払われます。イーサ (ETH) はイーサリアムのネットワーク内でガスとして利用されるほか、それ自体が価値を持ち、取引所で購入したり売却することが可能です。

このように分散型アプリケーション (DApps) を開発、実行するためのプラットフォームが「イーサリアム」で、その内部通貨が「イーサ」なのですが、日本ではどちらも「イーサリアム」と呼ぶのが一般的です。

イーサリアム (ETH) とビットコイン (BTC) の違い

イーサリアムとビットコインは、非中央集権的なブロックチェーンネットワークを基幹としている点で仕組みに大きな違いはありません。しかし、それぞれの開発目的は異なります。

ビットコインは、送金や決済という通貨としての機能を主体とした仮想通貨です。一方イーサリアムは、先述したように分散型アプリケーション (DApps) を開発するためのプラットフォームとしての機能を有しています。さまざまな用途のアプリケーションをイーサリアムのブロックチェーン上で開発、利用できるため、イーサリアムはビットコインよりも高い拡張性を持つと言えるでしょう。

またビットコインは総発行枚数が2,100万枚と定められており、一定期間ごとに新規発行量が減少する半減期が設けられていますが、イーサリアムは発行枚数の上限がなく、半減期も設けられていません。

イーサリアム (ETH) 3つの特徴と仕組み

スマートコントラクト

イーサリアムの最も特徴的な機能としては「スマートコントラクト」が挙げられます。

スマートコントラクトとは、あらかじめ定めておいた条件に合致した際に自動的に契約が実行されるプログラムやその仕組みのことです。スマートコントラクトの例としてよく挙げられるのが自動販売機です。自動販売機は、販売する人がその場にいなくとも購入する側がお金を投入すれば自動的に売買契約が成立します。イーサリアムではこれと同様のことをプログラミング言語によってブロックチェーン上に実装することが可能です。

イーサリアムのブロックチェーン上でスマートコントラクトを実装するメリットは、次の3つです。

  • 自律的に動作するため、契約を確認したり実行したりするための人手が不要
  • 実行されたスマートコントラクトの内容は誰にも変更できないため、改ざんの心配がない
  • スマートコントラクトで実行された契約の内容はブロックチェーン上に記録されるため、誰でも確認することができ、取引の透明性が確保できる

契約をプログラムが自動的に実行するという性質から、スマートコントラクトは金融や不動産取引、保険などの分野において活用されています。特に分散型金融「DeFi」は昨今盛況になってきており、名前だけは聞いたことがあるという方も少なくないでしょう。

DApps

先述したようにイーサリアムはDAppsを開発するためのプラットフォームとして生み出されました。分散型アプリケーション (DApps) とは、中央管理者の存在しないアプリケーションのことで、イーサリアムのスマートコントラクト機能を利用して実装できます。

DAppsのメリットとして、中央管理者が存在しないためダウンタイムが存在しないことが挙げられます。従来型の中央集権的なアプリケーション、つまりクライアントとサーバーがやり取りをするようなアプリケーションの場合、サーバーに不具合が発生するとサービスは利用停止となります。しかし、DAppsはネットワーク上でデータが分散して管理されているため、いくつかのコンピューターがトラブルにあったとしても、アプリケーションが利用できなくなることはありません。

またブロックチェーンの仕組みを利用しているため、データの改ざんが非常に難しいことや透明性が高いなどのメリットもあります。

ICO

イーサリアムには、スマートコントラクトによってトークンを発行するという機能があります。このイーサリアムのトークン発行機能を利用したのが、2017年に流行したICOです。ICOとは「Initial Coin Offering」の略で、企業などが独自の仮想通貨やトークンを発行することで資金調達を行う方法です。

イーサリアム以外にもトークンを発行できるブロックチェーンはありましたが、約8割のICOにおいてイーサリアムで発行されたトークンが利用されました。トークンの発行にイーサリアムが利用された理由としては、イーサリアムによって発行されるトークンはすべて「ERC-20」という規格にのっとったものであったことです。このことのメリットは主に以下の2つになります。

  • ICOを行いたい企業や団体が独自にトークンを開発、発行する手間が省ける
  • 共通の規格が存在することで、取引や保管が容易

仮想通貨やトークンを保管するにはウォレットが必要ですが、ウォレットごとに対応する通貨が異なるため、複数の種類のトークンを取引するにはその数だけ対応したウォレットを作成して保有する必要がありました。しかし、ERC-20という共通の規格を持つトークンはウォレットに関しても互換性があったため、対応しているウォレットがひとつあれば複数種類のトークンを一括で保管することが可能になったのです。

ICOは最盛期と比較すると下火になったものの、「法定通貨とペッグしたトークン」や「アートを保有している権利を表すトークン」など、資金調達以外の目的で多種多様なトークンが現在においてもイーサリアム上で発行されています。

イーサリアム (ETH) の歴史

イーサリアムは、2013年にヴィタリック・ブテリン氏によって考案されました。ブテリン氏は小学生のころからプログラミングを学び、ビットコインと出会ったのは17歳のとき。大学を中退して世界中のビットコインプロジェクトを見聞きしたことで、「あらゆる機能を搭載できるブロックチェーン」という、イーサリアムのアイディアを思いついたといいます。イーサリアムの誕生から価格推移を振り返ってみましょう。

イーサリアム (ETH) の価格推移

イーサリアムの価格推移は、次の4つのフェーズに分けられます。

  1. ICOのとき :2014年
  2. ブロックチェーンのリリース初期 :2015~16年
  3. 仮想通貨バブル :2017年~2019年
  4. 過去最高価格の更新:2020年末~2021年5月)

イーサリアムはICOによって開発資金が調達されました。2014年にビットコインと引き換えにイーサを販売し、約1730万ドル (約19億円) を調達。2014年のICO当時におけるイーサの販売価格は 0.311ドル (約34円) でした。

2015年にはイーサリアムのブロックチェーンが公開されましたが、当時のイーサリアムは機能が乏しく、レートは1ドル (約110円) 未満 でした。しかし、2016年の大規模アップデートによりプラットフォームとしての機能が充実し、最高値で約19ドル (約1,900円) をマークします。

2017年には空前の仮想通貨ブームが訪れ、2018年1月に当時のピークである1,455ドル (約16万円) をつけました。その後バブルが弾けると、他の仮想通貨とともに価格は下落。

しかし、2020年11月に入ると400ドル (約4万4000円) を超え、右肩上がりでどんどん価格が上昇。2021年5月11日に約3,900ドル (約42万円) の過去最高値を記録しています。この価格上昇の背景には、DeFiやNFTの市場が拡大したことでイーサリアムの使用用途が拡大したことや、大型アップデート「イーサリアム2.0」への期待があるでしょう。

イーサリアム (ETH) ハードフォークの歴史

イーサリアムにはリリースされた当初から4段階のハードフォークが計画されていました。

第1段階である2015年7月の「フロンティア」アップデートはイーサリアムのリリースに当たります。その後の2016年3月には第2段階となる「ホームステッド」アップデートが実施され、イーサリアムはプラットフォームとして機能するようになりました。

3段階目のアップデートである「メトロポリス」は複数回に分けて実施され、2017年10月の「ビザンチウム」から2019年2月の「コンスタンティノープル」を経て、2019年12月の「イスタンブール」で完了しています。第4段階となる「セレニティ」アップデートは「イーサリアム2.0」とも呼ばれており、コンセンサスアルゴリズムの変更やシャーディングの実装などの大規模なアップデートが2021年現在も実施されている最中です。

また、上記のような計画的なハードフォークとは別に、外部からの攻撃によりハードフォークせざるを得なかったこともあります。その代表的な例が2016年に起こった「The DAO事件」です。

The DAOとは、イーサリアムのプラットフォーム上に構築された分散型投資組織で、2016年5月にICOを開始し、巨額の資金調達を行ったことで話題を集めました。しかし、The DAOのプログラムには脆弱性があったことから、360万イーサ (当時のレートで約52億円) という大量の資金がハッカーに盗み出されるということになってしまいます。

イーサリアム開発陣は議論の末、盗難された記録のあるイーサリアムブロックチェーンを破棄し、事件前までのブロックチェーンを複製して新たなイーサリアムブロックチェーンとすること (ハードフォーク) を決定しました。つまり、ハッカーによって資金を盗み出されたこと自体をなかったことにしてしまおうとしたのです。

ですがこのハードフォークに対し、ブロックチェーンの「中央管理者が存在せず、いかなる人間であっても改ざんできない」という理念を無視したとして、開発陣の一部が反発。ハードフォークに反対した集団は、新たなイーサリアムブロックチェーンが発行された後も、盗難された記録のあるイーサリアムブロックチェーンを使い続けました。

これによりイーサリアムは、新たに生み出された「イーサリアム」と従来の「イーサリアムクラシック (ETC) 」に分裂することとなりました。またこの事件の影響で、当時右肩上がりだったイーサリアムの価格は暴落することとなります。

イーサリアム (Ethereum/ETH) の今後や将来性

イーサリアム企業連合 (EEA) の存在

各々の業界においてイーサリアムブロックチェーンの利用を研究する団体 「イーサリアム企業連合 (Enterprise Ethereum Alliance,通称EAA) 」には、200社を超える世界中の有名企業が参加しています。

参加企業としてはアクセンチュアやJPモルガン、マイクロソフト、日本企業では野村総合研究所やNTTデータなどが名を連ねています。

上記のような大企業の参加は、イーサリアムブロックチェーンが本質的に高い価値をもつことを裏付けているといえるでしょう。

イーサリアム (ETH) ETFの承認申請

ETFとは多数の投資家から集めた資金を、資産運用の専門家が金融商品に投資して運用するもの。私募である投資信託と同じ仕組みですが、ETFは投資信託よりも手数料が安いため、機関投資家による多額の資金の流入が期待できます。

2021年4月、カナダにおいてイーサリアムETFが承認されました[2]

ETF Trends, 3 Ethereum ETFs Gain Approval in Canada, 2021年6月13日参照

triangle。カナダでは、2021年2月にビットコインETFも上場が承認されています[3]

アメリカでは2021年5月現在 、ビットコインETFも承認されていない状態ですが、カナダで仮想通貨ETFが承認されたことで、承認に向けた動きがでるかもしれません。ビットコインETFが承認されれば、イーサリアムETFが承認される日も近いでしょう。

DeFiとイーサリアム (Ethereum/ETH)

DeFiとは「Decentrized Finace」の略称で、日本では「分散型金融」と呼ばれることが多いようです。ブロックチェーン上に実装されたDAppsのうち、金融サービスを提供するものを指します。

金融サービスといっても、提供されるサービスはさまざまです。例えば、ユーザー同士を直接接続して仮想通貨を交換できるDEX (分散型取引所) や「流動性プール」に資産を投じて引き換えに手数料をもらう流動性マイニング、仮想通貨を貸し出して利息収入を得るイールドファーミングなどがあります。

これらの金融サービスを提供するDAppsの多くがイーサリアムブロックチェーン上に構築されています。DeFiが注目を集めたことで、イーサリアムのプラットフォームとしての価値はさらに高まったといえるでしょう。

またDAppsを動かすには、ガス代としてイーサを支払う必要があります。これによりイーサ の需要が増し、価格の高騰につながりました。

イーサリアム2.0への移行

「イーサリアム2.0」とは、イーサリアムにおける大型アップデートの名称で「セレニティ」アップデートとも呼ばれます。この「イーサリアム2.0」における主な変更点は以下の2つです。

  • コンセンサスアルゴリズムの変更
  • シャードチェーンの実装

現在のイーサリアムはコンセンサスアルゴリズムにPoWを採用していますが、PoWはネットワークに接続している世界中のコンピューターで大量の計算を行う方式のため、ネットワークの維持に膨大な電力を消費しているという問題点があります。そこでイーサリアムは、コンセンサスアルゴリズムを計算量ではなく保有している資産の量で決定するPoSへ変更することで、上記の電力問題を解決することを決定しました。実際にPoSを実装するためのビーコンチェーンが2020年12月に導入されており、今後年単位の時間をかけて移行が行われる予定です。

またイーサリアムは電力問題だけでなく、実行される取引の量にネットワークの処理速度が追いつかなくなる「スケーラビリティ問題」も抱えています。その解決策が2つ目のシャードチェーンの実装です。シャードチェーンとは、イーサリアムブロックチェーンにおける負荷を改善し、処理速度を向上させるための仕組みのこと。具体的には、イーサリアムブロックチェーンを分割することで、多くのノードが並列に処理を行えるようになるというものです。

コンセンサスアルゴリズムの変更と同様にシャードチェーンの実装にも年単位の時間がかかる見通しですが、実装が完了すればネットワークの処理速度が飛躍的に向上するためガス代の低下などが期待できます。

イーサリアム (ETH) まとめ

イーサリアムの定義や特徴をかんたんにまとめると、次のとおりです。

  • DAppsの開発や実行が可能なプラットフォームである
  • スマートコントラクト機能により、商取引を自動実行できる
  • 「ERC-20」という共通規格を持つトークンを発行できる
  • 内部通貨であるイーサ (ETH) は送金やスマートコントラクトを実行する際の手数料 (ガス代) として利用できる

DeFi市場が拡大しているため、 通貨イーサ (ETH) はガス代としての需要が高まっており、価格が高騰しています。またイーサリアムの開発最終段階である「イーサリアム2.0」は、初期である現在フェーズ0の段階。今後開発が進捗することで、イーサリアムの価格はますます高くなることが予想できるでしょう。

情報ソース・引用元一覧

2

ETF Trends, 3 Ethereum ETFs Gain Approval in Canada, 2021年6月13日参照