- イーサリアムのガスとは送金を行うための手数料
- トランザクションを行う人が高く設定するほど送金が速くなる
- 2020年はガス代の高騰が目立つようになった
「イーサリアムのガスって何?」「手数料を好きに設定できると聞いたけどどうやってやるの?」などと疑問に思っていませんか。
イーサリアムのガスとは手数料の1種で、やり方を覚えれば好きなように設定可能です。
今回はイーサリアムの手数料システムを知らない人のために、ガスの意味や利用方法を紹介します。
これを読めばガスの全体像がわかり、理解しながら使えるでしょう。
イーサリアム (Ethereum/ETH) とは
イーサリアムとは自動契約システム「スマートコントラクト」を提供するプラットフォームです。ブロックチェーン上でプログラムを作れることから、ゲームやアプリを開発するベースとしても役立っています。
スマートコントラクトは、一定の条件を満たしたときに、自動で契約を実行するシステムです。取引情報を収めるシステム「ブロック」にプログラムを書き込むことで使えます。
たとえば「2000円分以上の購入」という前提条件で「10%引き」の作業をブログラミングしておけば、条件達成がわかり次第イーサリアムが自動で割引処理をしてくれるでしょう。
「Solidity」というプログラミング言語を備えているおかげで、イーサリアムはアプリやゲーム開発のベースとしても使えます。これによりイーサリアムのブロックチェーン上でプログラムを作れば、オリジナルのアプリやゲームを配信できるようになります。
イーサリアムはスマートコントラクトやSolidityといった独自のシステムを備えていて、さまざまなところで利便性を発揮するプラットフォームです。
イーサリアム (Ethereum/ETH) のガスとは
イーサリアムのガスとは手数料の1種です。ユーザーがやりたいトランザクションに対して、どれだけの計算ステップが必要かを測る指標になります。
暗号資産(仮想通貨)の送金を認めてもらうには、トランザクション承認に必要なデータ計算処理をする「マイナー」に手数料を支払う必要があり、ガスはその単位になります。ガスはトランザクションシステムを動かす「燃料」です。
イーサリアムにはトランザクション実行のために、ガスという手数料が必要と覚えておきましょう。
ガスが必要な理由
イーサリアムのトランザクションにガスを要する理由として、以下の2つが考えられます。
- 人気プラットフォームゆえのネットワーク内の過負荷を防ぐため
- マイナーの負担軽減のため
イーサリアムにガスというルールがあるのは、ネットワーク内の過負荷を防ぐためです。
暗号資産(仮想通貨)として世界一といわれるビットコインに次ぐ人気があるため、送金手段としてイーサリアムを使う人も多いでしょう。しかし世界中の送金件数が多くなるほどネットワークに大きな負担がかかり、送金スピードも落ちます。
ネットワークの負担が一線を超えないように、ガスという制度を使ってコントロールしています。
他にも送金件数が多くなるほどマイナーはすべての取引承認に必要な作業をしなければならず、負担が大きくなるでしょう。しかしガス価格や限度額を定めることで、マイナーは作業の優先順位を決めつつ、スムーズに取引承認を済ませられます。
結果としてガス代を高く設定するほど、マイナーから優先的な取引承認を受けやすくなりました。ガス価格の決定をユーザーにまかせることで、マイナーは高い方を優先して作業するようになります。このようにマイナーの労働対価を高める意味でガス代は重要です。
ネットワークやマイナーの負担が重くなりすぎないうえでも、ガスは大切です。扱いやすくするうえでもガス代の設定は適度に行いましょう。
ガスの活用
ガスの活用はサイバー攻撃対策にもなります。イーサリアムは過去にDos攻撃のような不正アクセス被害を受けているため、それに対応する必要があったからです。
Dos攻撃はネットワークやサーバーに過剰な負荷をかけたり、セキュリティの甘さを突いたりしてサービスを健全に行えなくする妨害行為です。
しかしイーサリアム側はすべてのトランザクションに対してガスという手数料を課しています。Dos攻撃を仕掛ける側もガスを払わないとできないしくみです。イーサリアムの手数料システムはサイバー攻撃からプラットフォームを守るきっかけにもなります。
イーサリアムはこれまで「フロンティア」「ホームステッド」「メトロポリス」「セレニティ」と4段階にわたるハードフォークを行い、システムを作り変えています。このたびにガスの平均価格も変わり、Dos攻撃者の対策につながっています。
ガスの活用はサイバー攻撃からイーサリアムを守る目的もあるのです。
イーサリアム (Ethereum/ETH) のガス価格の決め方
イーサリアムではガスの価格とリミットをかけ合わせて、正式なガス代を決めています。たとえば2万UNITSのリミットで8Gweiだったら、16万Gweiがガス代です。
1Gweiは0.000000001なので、0.00016ETHの手数料を要します。取引所がイーサリアムを管理しているときは、送金手数料が固定なので、ユーザーによるガス代操作は不可能です。
トランザクション実行時のガス価格の目安を、払う前にチェックしたい人もいるでしょう。ETH Gas Stationにアクセスすれば、そのときのイーサリアムネットワークの混雑状況に応じた、適切なガス代の目安がわかります。
ガスリミットは自動車の燃料のような存在です。燃料があるほど遠くへ行けるように、ガスリミットが高いほど多くのアドレスに届きます。少なければトランザクションが届かず失敗することもあるでしょう。必要以上にガスリミットを上げたときは、最低限のUNITSしか使われず、余った分を払い戻してもらえるしくみです。ガスリミットは燃料に等しいと考え、抑えすぎると送金が届かない可能性も考えましょう。
ガス価格はガソリンの値段のようなものです。ガソリンの価格が高いほど良質なように、ガス価格も高いほどトランザクション処理が速くなります。取引を処理するマイナーは手数料が高いものを優先して作業するので、送金を急いでいるときは手数料を上げる選択肢もあるでしょう。しかし価格はリミットと違い、1度払っても全額は戻ってきません。速く送金を済ませたいからといってガス価格を上げすぎると損になるので気をつけましょう。
イーサリアム (Ethereum/ETH) のガスの問題点
ガスの高騰
イーサリアムは、2020年4月以降に利用コストが以前の5倍も上がりました。これはイーサリアム上でゲームやアプリなどのプログラムを運用している人にとって負担になります。
ガス代が上がりすぎると多くのユーザーがイーサリアムから離れてしまうでしょう。この問題を解決するための抜本的な手段が求められる状況です。
イーサリアムの開発陣営はEIP1559を導入し、トランザクション手数料のシステムを見直すことを明かしています。取引コストの削減により、ユーザーの離脱を引き止める狙いでしょう。
ガス代の上昇で出費が多くなると、イーサリアムの魅力が減ってしまいます。過剰な高騰を防ぐシステムの導入が望まれるところです。
適切なガス代
イーサリアムを利用するには、適切なガス代設定が重要です。
しかしウォレットによっては初期のガス価格がETH Gas Stationが示す相場より高い設定になっているケースもあります。ここを変えないままトランザクションを進めると、知らないうちに損をするでしょう。
イーサリアムの送金が必要になったときは、ETH Gas Stationによる事前チェックが大切です。アクセスすれば、イーサリアムネットワークの混雑状況に応じて、適切なガス価格をリアルタイムで教えてもらえます。
イーサリアムの適切なガス代は、ETH Gas Stationがヒントになります。参考にすればガス代を払いすぎたり、足りなくて送金に失敗したりするリスクを抑えられるでしょう。
EIP1559 とは
EIP1559とは、イーサリアム開発者であるヴィタリック・ブテリン氏をはじめ複数のメンバーが提案したコンセプトです。トークンとしての「バーン」として市場からの排除を受ける基本料金と、マイナーに支払うチップの2つからなります。
基本料金には規定の水準があり、ネットワークの状況から数値を決めます。
チップはマイナーへの報酬ですが、取引の承認待ちの列を飛ばすために増額も可能なしくみです。マイナーが承認したい取引の優先順位を決めることで多くをさばき、混雑解消を望めます。
EIP1559は必要に応じて高速道路の車線を増やしたり減らしたりするようなしくみと考えましょう。
ユーザーは急ぎの用事があれば多くのチップを払うことで、優先車線を通るように先に取引を承認してもらえるようになります。
システム障害で多くの決済消化が難しくなったときもEIP1559が役に立っています。過去にはゲーム「クリプトキティーズ」の流行時やイーサリアムの価格暴落により、引き出しが殺到したときにEIP1559が活躍しました。
EIP1559は、たくさんのイーサリアムの取引をスムーズに済ませるために必要な構成要素です。
メタマスク (MetaMask) の開発者が提案した「EIP 2593」
EIP2593の提案もあります。イーサリアムなどを収められるウォレット「メタマスク」を開発したダン・フィンレイ氏が提案したもので、取引手数料をゆっくり上げながら、可能な限り低い水準にとどめるシステムです。
これは「エスカレーター・アルゴリズム」といい、ユーザーの手数料の払いすぎを抑えることを期待できます。安い段階から少しずつ上げることで、適正な手数料を探るからてす。
EIP2593はEIP1559のマイナーへの支払い機能を調整するため、イーサリアムのシステムに新たに加わる可能性があります。2020年6月24日にはEIP1559とその関連機能への影響を調べるため、EIP2593のテストネットを動かすことが決まっている状況です。
ガス価格の適正化のため、チップへの追加提案としてEIP2593が挙がっています。
イーサリアム (Ethereum/ETH) のガスに関するQ&A
なんでガス代が高騰しているの?
イーサリアムのガス代が高騰しているのは、マイナーがガスを高く設定しているトランザクションを優先しているからです。
マイナーも時給換算で少しでも高い報酬をもらいたいと考えているのでしょう。
しかし結果として、グラスノード調べで2020年1月には0.08ドルだった平均ガス代は、2020年5月に0.41ドルは5倍になりました。この間におけるガスの量も増加傾向です。
イーサリアムは人気のある暗号資産(仮想通貨)なので今後も利用者が増えれば、ガス代の増加が続くかもしれません。
ガス代が高くなるとどんなデメリットがあるの?
ガス代とは、トランザクションの際にかかる手数料です。
なのであなたがなにかのトークンを持っていて、それを別のトークンに変える際などにもガス代がかかります。つまりガス代が高くなってしまうと、気軽に取引を行えなくなるというデメリットがあります。
イーサリアム (Ethereum/ETH) のガスに関するまとめ
イーサリアムのガスとは手数料の一種で、高く設定するほど送金を速く済ませられるメリットがあります。
しかし払いすぎると損なので注意です。
ETH Gas Stationにアクセスすれば、ネットワークの混雑状況に応じた適正ガス価格を知れます。こちらを参考にしながら、急ぎであるかないかで調整を加えましょう。
イーサリアムのガス代はネットワークの安定した運営のために必要なものです。手数料システムへの理解を深めながら利用しましょう。