- トークンエコノミーとは代替貨幣で構築される経済圏を意味する
- 法定通貨に依存していた経済体系を変化させる
- これまで価値のなかったものに価値を付与する
経済動向の変化により、トークンエコノミーという言葉を聞いたことがある人も多いでしょう。しかし、大半の人がトークンエコノミーを体系的に理解しているとは言えません。
トークンエコノミーの活性化は既に進んでおり、今後の経済の主流となってくることが予想されるので、各個人でもトークンエコノミーを理解していく必要があります。
トークンエコノミーとは
トークンエコノミーとは
トークンエコノミーとは、トークン(貨幣の代替価値のあるもの)を活用したエコノミー(経済)という意味です。
トークンの価値を担保する技術としてブロックチェーンを採用している仮想通貨での経済圏は、トークンエコノミーの代表例です。
これまでの経済の課題
これまでの経済を回している主体は法定通貨でした。法定通貨を当たり前のように利用し、その価値に疑問を持っていない人が大半でしょう。
法定通貨は価値を国に依存するため、ユースケースにおいて自由度に限りがあり、新たな経済圏の成長を抑制するなどの課題を有しています。
法定通貨により回る経済では、サービスの対価として法定通貨を払うことで成り立っています。つまり、サービス提供側と価値の発行元を分ける必要がありました。
こうした管理サービス体系の分別は、インターネットが普及した現代において、サービス提供側は国境を越えた広い枠組みでサービスを展開しているにも関わらず対価の支払いは国に依存してしまうというギャップを発生させています。
トークンエコノミーが実現すること
トークンエコノミーではトークンごとに経済圏が構築されるので、コミュニティー形成が活発化されます。よって、既存の経済システムでは成し得なかったことを実現できるとされており、既に応用されはじめています。
法定通貨抜きで経済が回る
トークンエコノミーでは、法定通貨に依存することはないので、独自に形成されたトークンで経済が回るようになります。
法定通貨抜きで経済が回るようになるので、グローバルな企業のサービス展開を加速させたり、貨幣によって構築されていた国家間の障壁を取り除くことができます。
いままで価値がつかなかったものに価値をつけられる
トークンエコノミーでは、これまで価値をつけることができなかったものに対して価値をつけることができるようになります。
人物や時間などが代表例です。人物をXとした時、供給数限度を定めてXトークンなるものを発行し、投資家が購入することで、Xへの需要が高まりをみせたならば原理的にXトークンの価値は高まり、Xトークンが他のトークンとの互換性があればXトークンで何らかの決済も可能となります。
仮想通貨は、通貨によっては誰でも独自のトークンを発行することができ、他の通貨との交換が可能となります。つまり、発行したトークンがビットコインなどの主要コインほどの価値がつかなくとも、一定の需要に基づく価値付けがされれば、実用性が発生します。
よって、仮想通貨の誕生とユースケースの拡大は、価値のつかなかったものへの価値の付与をスムーズにする性質を有していると言えます。
トークンとは
トークンとは、法定通貨の代替貨幣になるものを指し、仮想通貨やICOと同一認識されるケースが目立ちます。
トークンと仮想通貨の違い
そもそもトークンとは、既存のブロックチェーンプラットフォーム上で作成されたものを指します。仮想通貨もトークンの1種であり、本質的な違いはありませんが、仮想通貨の場合は新たなプラットフォームで作成されたものを指します。
トークンとICO
ICOとは、トークンにより資金調達を行うもので、厳密には仮想通貨での資金調達イコールICOではなく、ICOで資金調達を行う1つに仮想通貨という手段を用いているという認識が正確でしょう。
ICOでは、迅速な資金調達やスタートアップ企業の資金調達の障壁を軽減するメリットがありますが、プロジェクトの進行が不透明であることなどがデメリットでもあります。
ICOの場合、リターンが大きい分、投機目的となってしまいがちですが、根本的には資金調達の1種という認識を持つことが重要で、これからICOに参加する人は、この根本を今一度知っておく必要があります。
トークンエコノミーの具体例
既にトークンエコノミーの動きは活発化しており、その具体例には「ぽりぽり」や「VALUE」などがあります。
ぽりぽり
「ぽりぽり」とは、ブロックチェーンの活用で独自トークン「Polin」の発行によりトークンエコノミーを構築することで、良質な政治コミュニティーを作り上げるサービスです。
政治という分野の特性である巨大な影響力と市長規模を持つことと、政治システムやコミュニティーがアナログである点は、現代社会にとって大きなギャップを生んでいました。
「ぽりぽり」では、「議論機能」、「政治家一覧機能」、「質問機能」という3つの主たる機能により、政治に関するディスカッションの活発化、マスメディアに依存していた政治に関する情報収集、政治家から一般人への発言などの交流を図ることなどが期待できます。
また、過激な議論の多い政治コミュニティーの問題点に関しては、トークンを介在させることで、良い発言にはトークンの付与、モラルの欠く言動ならばスコアの減点などの仕組みを取り入れることで、健全なコミュニティー運営を果たします。
VALUE
VALUEとは、なりたいもの、やりたいことを実現するために、 ユーザー同士が自由に支援し合えるSNSサービスです。youtuber炎上でネガティブなイメージが先行してしまっているサービスですが、トークンエコノミーを構築する代表的な具体例の1つです。
プラットフォーム内で「VA」という独自トークンを発行することで、ユーザーは自身の価値をトークンとして発行することや、ブレイクしそうな人や応援したい人などの「VA」を購入できたりします。
つまり、人の価値をトークン化することとなり、取引にはビットコインを用い、トークンの発行にはOpenAssetプロトコルを利用することで、シームレスな経済圏の構築を実現しています。
トークンエコノミーと仮想通貨の関係
トークンエコノミーとは、トークンと呼ばれる仮想通貨を用いた経済圏です。最初に、ユーザーにサービスを提供したい企業が貨幣の代わりにトークンを発行します。ユーザーがトークンを購入すれば、そのトークンの価値は上昇し、企業独自の経済圏が誕生します。
たとえば、既存のサービスである楽天スーパーポイントやVALU・タイムバンクもトークンエコノミーの一種です。
トークンとブロックチェーン
トークンとブロックチェーンの関係は切っても切りはずせない関係です。なぜなら、発行されたトークンの信頼性を高めるためにはブロックチェーンの承認が必要だからです。
もしトークンの発行者が、購入者には有限だから価値があるトークンですよといっているのに、自由にトークンの数を増やしたり、購入したはずのトークンを後から書き換えて、違う人が購入していたことにされたら信用できないですよね?
しかし、ブロックチェーンを使用して、トークンの取引記録を第三者が承認すればこのような不正は行われません。したがって、トークンの価値と信頼性の向上にブロックチェーンの技術が必要なのです。
トークンとICO
トークンを発行して資金調達を行う方法はICOと呼ばれます。トークンを発行した企業はICOで資金調達を行い、プロジェクトなどを進めます。しかし、発行したトークンに信頼性がなかったり、価値がないと判断されれば、資金は集まりません。
そこで、ホワイトペーパーなどで投資をするメリットや事業計画について説明を行うのです。
トークンエコノミーの将来性
トークンを発行すれば、世界中の人を相手に自社だけの新たな経済帯を誕生させることができます。さらに企業だけでなく個人でもトークンを発行できます。
たとえば、サッカーのコロンビア代表のハメル・ロドリゲス選手は仮想通貨のプロジェクトSelfSellと契約し、JR10トークンを発行しました。このように、今後は企業だけでなく、有名人などがトークンの発行を行うなど将来性は高いです。
IoT(Internet of Things) への期待
IoTとはこれまでインターネットに接続されていなかったものをつなくことです。
IoTはブロックチェーンとの相性が良いため、高いセキュリティを維持しながら複数の会社で情報の共有をすることができます。また、これまで手動で行っていた支払いなどを自動で行うことも可能です。今後、トークンエコノミーとIoTの活用が多くなる可能性は高いです。
IoTの具体例として、留守の間のペットの行動を知ったり、帰宅する数分前にリビングのエアコンを起動することなどができます。
トークンエコノミーの具体例
ここからはトークンエコノミーの具体例を解説します。トークンエコノミーはすでに国内でもLINEやGMOインターネットなどが積極的に研究をしています。
「LINE Token Economy」構想
LINEは現在では、チャット機能だけでなく、通話やキャッシュレス決済、ゲームや音楽など様々な事業を行っている企業です。そして、さまざまな事業の決済に使えるLINKコインの構想を発表しています。
LINKコインをリリースすれば、LINEのなかで提供されるサービスはLINKコインで決済ができます。またLINEの株式や現金はLINKコインに交換も可能です。そうなればLINEの経済圏の価値はより大きくなります。
「GMOオープンソースブロックチェーン」
GMOインターネット株式会社 は、地域トークンの活用に積極的な企業です。GMOが発表した地域トークンのメリットは以下の2点です。
- 自治体や企業が独自のトークンを発行できる
- トークンの発行や加盟店の登録をブロックチェーン上で行える
自治体などがトークンを発行することで、その地域でしか利用できない地域ポイントを発行して、地域経済を活性化させることができます。
さらにポイントの利用には、仮想通貨を持つ必要はありません。GMOオープンソースブロックチェーンは、第6弾まで発表されており、今後も期待が持てます。
セリエAのサッカークラブがトークンエコノミー構築を目指しトークン発行へ
2019年にイタリアのサッカークラブASローマがチーム独自の仮想通貨の発行計画を発表しました。ASローマのパートナーであるSociosのアプリで、ASローマとファンの間でやり取りをしたり、独占的な商品やゲームへのアクセスができます。
この試みが成功すれば、他のサッカークラブにも追従する動きがでるかも知れません。まとめ
トークンエコノミーは、ブロックチェーン技術とインターネットの普及に後押しを受けています。
時代の流れとともにトークンエコノミーは推進されていくものという見方が多く、サービスの利用体系を良い方向に変化させていく期待が集まっています。