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仮想通貨のウォレットとは

仮想通貨のウォレットは、ハッキングによる取引所からの資産流出などのカウンターパーティリスクを回避する非常に重要な役割を持っており、仮想通貨投資を安全に行う上で必要不可欠な存在です。ここでは、ウォレットの概要や注意点、登録方法などについて解説していきます。

編集:
松本 頌平 (Shohei Matsumoto)
この記事の編集者
松本 頌平

暗号資産 (仮想通貨) を専門に扱うライター兼編集者であり、執筆作品はKasobuにて紹介されています。

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仮想通貨ウォレットとは

仮想通貨ウォレットとは、仮想通貨を個人で保管するシステム全般を指します。ただ保有するだけでなく、ウォレット上で送受金を行ったり、店舗決済を行うこともでき、まさに「財布」の役割を果たしています。

仮想通貨は公開鍵暗号方式というセキュリティシステムを採用しており、公開鍵と秘密鍵を揃えることで初めて仮想通貨にアクセスが可能です。ウォレットを使うことで、この内の秘密鍵を第三者がアクセスできないように管理することができます。

仮想通貨ウォレットにはインターネット上で仮想通貨を管理するホットウォレットと、ネットに接続しないコールドウォレットの2タイプに大きく分けられます。そして更に、ホットウォレットは3種類、コールドウォレットには2種類のウォレットに分けることができます。それぞれの種類にはセキュリティや利便性に特徴があり、仮想通貨の利用目的に合わせて使うことが肝要です。

仮想通貨取引所とウォレットの違い

仮想通貨の取引をする人は、まず取引所に口座を開設しなくてはなりません。口座開設と同時に、ユーザーには個人専用のウォレットが自動的に作成され、そこで仮想通貨を管理することができます。

しかし、取引所に仮想通貨を預けている場合は、その秘密鍵の管理も取引所に委託することになってしまいます。そのため、法律上私達は仮想通貨を「所有」していることにはなりません。

仮想通貨を「所有」していないと、例えば取引所がハッキングされて私達の仮想通貨が盗難された場合、全ての資産が返ってこない可能性があります。実際、2014年に世界最大規模の取引所 Mt.Goxがハッキングされた際に盗難されたビットコインは、現在民事再生手続きの最中であり、2021年6月現在未だに債権者に返却されていません。[1]

Mt.Gox公式, 再生計画案の付議決定について, 2021年6月5日参照

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もちろん、規約に返還保証などが定められているケースもありますが、返還までにタイムラグがあったり、全額返還がされない可能性があったりと、回避するべきリスクは十分にあります。

一方で、仮想通貨をウォレットで保管している場合は、秘密鍵を自身で管理するために、ビットコインが自分の資産であるという所有権が証明できます。そのため、取引所のハッキング・倒産による仮想通貨紛失のリスクを最低限にすることができます。

仮想通貨のウォレットの仕組み

仮想通貨には公開鍵暗号方式が使用されています。公開鍵は銀行口座で言うところの口座番号の役割をしており、取引や送金の際に第三者に公開しても問題ありません。一方で、秘密鍵はパスワードに近い役割を持っており、第三者に公開されると、簡単に仮想通貨が盗難されてしまいます。

ウォレットは、この秘密鍵を暗号化して高いセキュリティの下に管理をします。秘密鍵をウォレットで管理することによって初めて、私たちは仮想通貨の所有権を証明できるのです。

シングルシグ方式

シングルシグとは単一署名のことです。シグはシグネチャ (署名) を意味しています。シングルシグ方式では、1組の秘密鍵と署名だけで仮想通貨にアクセスできます。家や金庫の鍵のように、一つの鍵穴に一種類の鍵が対応していて、その鍵を開ければ中に入ることが可能です。秘密鍵を複数管理する必要がない分、煩雑さは減りますが、セキュリティには不安が残ります。

マルチシグ方式

秘密鍵にはシングル方式のほか、マルチシグ方式と呼ばれる方式があります。マルチシグとは、複数の暗号鍵ペアを使用して仮想通貨を動かす方法です。

マルチシグでは必要な署名を分数で表記します。たとえばマルチシグに2/3と表記されている場合には、3つ設定された秘密鍵のうち2つが必要です。そのため万が一1つの鍵を盗まれても、ほかの鍵が盗まれなければハッキングのリスクはありません。

そのためマルチシグ方式のほうがシングルシグ方式よりも安全性が高い状態で活用できるといえるでしょう。

ちなみに、シングルシグ方式のウォレットからマルチシグ方式のウォレットに送金することはできますが、マルチシグ方式からシングルシグ方式に送ることはできません。シングルシグのウォレットを使用する際は注意しましょう。

仮想通貨のウォレットを使用するメリット

仮想通貨のウォレットを使用する主なメリットは以下の3点です。

  • 分散保管が可能
  • 残高照会や送金がかんたん
  • カウンターパーティリスクの軽減

ウォレットを複数用意して保管すれば保有している通貨を分散して保管できます。1つにまとめて管理するよりも、損失リスクを軽減できるでしょう。またリアルタイムの残高確認もかんたんです。モバイルウォレットならば端末とネット環境さえあれば、外出中に残高確認をして、送金も手軽にできます。

カウンターパーティリスクとは取引所のハッキングや倒産などで,自身の仮想通貨が紛失してしまうリスクです。ウォレットに保管しておけば、取引所で操作が停止してしまった場合にも影響を受けないため、カウンターパーティリスクが軽減できます。

仮想通貨ウォレットの種類

仮想通貨のウォレットは大きく分けると以下の2種類です。

  • ホットウォレット
  • コールドウォレット

ホットウォレットとはインターネットを接続して利用するタイプです。ウェブウォレット・デスクトップウォレット・モバイルウォレットがホットウォレットにあたります。ネットに接続して保管・送金できるため、外出時に使えたり、ウォレットから即座に取引ができる点がメリットです。しかしネットに接続するため、ハッキングのリスクは存在します。

コールドウォレットはオフラインで利用するウォレットです。ハードウェアウォレットやペーパーウォレットがあります。利便性はホットウォレットと比較すると劣りますが、ハッキングのリスクが低く、セキュリティが高いため多額の仮想通貨を保管する際にぴったりです。

その他の仮想通貨管理方法:スマートコントラクトでの保管

仮想通貨ウォレットは秘密鍵を紛失してしまうと、永久的に引き出せなくなってしまいます。そのためスマートコントラクトで保管するのも1つの方法です。スマートコントラクトとはあらかじめ設定しておいたルールに従って、ブロックチェーン上で自動的に実行するシステムのことです。

それを利用して、時間制限マルチシグアドレスというシステムをスマートコントラクト上で実装することが可能です。マルチシグアドレスは、仮想通貨にアクセスするために複数の秘密鍵が必要なセキュリティ方式でした。

例えば、スマートコントラクト上でビットコインを送金する際に、最初の10年は2つの秘密鍵が必要だが、それ以降は一つの秘密鍵でよい、というコントラクトを作ることができます。これは資産の贈与に便利で、自分と家族がそれぞれ一つずつ秘密鍵を持っていて、10年後に自分の秘密鍵が必要無くなるように設定しておけば、自分の身にもしものことがあっても家族が仮想通貨を引き出すことができます。

鍵保管サービスを活用する

自分で鍵を保管するのが不安な人は、鍵保管サービスを活用しましょう。鍵保管サービスとは、複数ある秘密鍵の一部を自分の代わりに管理してくれるサービスのことです。

たとえば2/3マルチシグの場合、3つの秘密鍵のうち、1つをサービス会社に保管してもらいます。万が一自分の鍵を1つ紛失してしまっても、預けていたもう1つの鍵を使えば送金可能です。

ほかにも自分が秘密鍵を保管し、バックアップとしてサービス会社に秘密鍵の一部を預けておくサービスもあります。

仮想通貨のウォレットを使う際の注意点

仮想通貨のウォレットを使う際には、以下の3点に注意しましょう。

  • 正規代理店から購入する
  • 1つのウォレットで一括管理をしない
  • 利用シーンや目的に合わせてウォレットを選ぶ

ここからは3つの注意点についてそれぞれわかりやすく解説していきます。

ウォレットは正規の代理店から購入する

ウォレットにはさまざまな種類があり、価格も大きく異なります。とくにハードウェアウォレットは高額なものが多く、中には品薄状態の商品もあるほどです。

ハードウェアウォレットは、公式サイトや正規代理店のほか、インターネットなどで安く販売しているところもあります。ただし正規販売店や公式サイト以外で購入した場合、既に秘密鍵の設定が済んでいる可能性があり、ウォレット内に保管していた仮想通貨を盗まれる危険性があるので注意が必要です。

購入の際には新品を公式サイトもしくは正規代理店から購入することを強く推奨します。

一つのウォレットで全てのコインを管理しない

ウォレットのメリットは、分散管理ができる点です。1つのウォレットに一括管理して置いた場合、秘密鍵を紛失してしまったら保有しているすべての仮想通貨を失ってしまいます。

また万が一秘密鍵を盗まれてしまうと、ウォレット内の通貨も一緒に盗まれてしまう危険性が高いです。複数のウォレットに分散して管理しておけば、1つのウォレットが盗まれても、ほかのウォレットは無事です。

被害を最小限にするためにも、複数のウォレットで分散して管理するようにしましょう。

目的に合わせたウォレット選びが重要

ウォレットは目的に合わせて選ぶことが重要です。多額の仮想通貨を保有している人は、セキュリティが高くハッキング被害を受けないペーパーウォレットやハードウォレットがおすすめです。また外出時などに送金や決済をする人には、モバイルウォレットやウェブウォレットなど、スマホやタブレット端末から操作できるウォレットが使いやすいです。

しかしネットにつながっているためハッキングの恐れがあるので、保管する額は必要最小限にとどめておきましょう。自分の目的に合ったウォレットを選ぶためには、それぞれの特徴やメリット・デメリットを理解しておかなくてはなりません。

仮想通貨のウォレットに関するまとめ

取引所で購入した仮想通貨は、取引所のウォレットにそのまま放置しておかず、取引に必要な資金だけを残してあとは自分のウォレット内で管理するようにしましょう。

ウォレットにはさまざまなタイプがありますが、セキュリティが高いウォレットを探している人にはマルチシグ方式のコールドウォレットがおすすめです。

ただし1つのウォレットにまとめて管理するのではなく、複数のウォレットを併用して管理をすれば、ハッキングなどのリスクをより軽減できます。目的に合わせてウォレットを選んで、安全に仮想通貨を保管しましょう。

情報ソース・引用元一覧

1

Mt.Gox公式, 再生計画案の付議決定について, 2021年6月5日参照