- ハードフォークとはコインの「互換性の無いアップデート」
- ハードフォーク前後では通貨の価格が大きく変動
仮想通貨について調べていると「ハードフォーク」という言葉をよく見かけます。「ブロックチェーンが分岐する」、「互換性がなくなる」などポイントでの理解ができていても、ハードフォークの全体像や価格にどのような影響があるかなど体系的に理解できていない方が多く存在しています。
ハードフォークは仮想通貨の変化を語る上で重要なポイントになります。つまりハードフォークの理解が仮想通貨への理解を一段と深めることができます。
ハードフォークとは
ハードウォークの概要
仮想通貨のハードフォークとは、仮想通貨のネットワークを支えるためのソフトウェアを変更することをいいます。以前のソフトとは互換性の無いものに変更されるため、各マイナーはソフトの入替作業が必要になります。
以前のソフトウェアと新しいソフトウェアを使うマイナーが一定期間存在することで、新旧2つのブロックチェーンが存在することになります。しかし以前のソフトウェアを使うマイナーがいなくなることで、古いブロックチェーンは破棄されます。
Segwit(セグウィット)とは何が違うのか?
Segwitは技術の名前です。一つ一つの取引データを圧縮することで1ブロックあたりに収められる取引データ数を増やすことができます。ゆえにたくさんの取引を一度に処理することができるようになり、仮想通貨の機能性がアップします。
Segwitが求められた背景には、ビットコインのスケーラビリティ問題があります。一度に大量の送金が発生すると処理が追いつかなくなり、着金するまでに非常に時間がかかっていました。
ビットコインはSegwitを導入するとき、以前のソフトウェアと互換性のあるソフトへ変更しました。このアップグレードの仕方をソフトフォークといいます。ソフトフォークはソフトウェアの入れ替え作業がないため、マイナーにとってはハードフォークよりも楽なはずです。
ソフトフォークとは
ソフトフォークとは、仮想通貨の基盤となるコードを変更する際に「古いバージョンと下位互換のある」ソフトウェアにアップグレードすることです。つまり、新しいソフトウェアにアップグレードしなかったマイナーも、引き続きブロックチェーンネットワークに参加できます。
ただし参加はできるものの検証がうまくいかず、報酬をもらえる機会が減ってしまうこともあります。そのためマイナーはアップグレードを行い、ブロックチェーンは新しいソフトウェアに段階的に統一されていくでしょう。ソフトフォークの場合は、仮想通貨の分裂は起こりません。
ハードフォークの目的
ハードフォークを行う目的の多くは、仮想通貨の性能をアップグレードするためです。これまでに行われたハードフォークでは、次の2つを目的にしたものがありました。
スケーラビリティ問題の解決
ハッキング行為の無効化
スケーラビリティ問題の解決
1つ目はスケーラビリティ問題の解決です。一度に大量の送金が発生すると、送金の処理が追いつかずに送金が遅延してしまうということです。
このスケーラビリティ問題を解決するために、ハードフォークかソフトフォークかのどちらか適切なアップデート方法が選択されます。
ハッキング行為の無効化
2つ目はハッキング行為の無効化です。これは2016年の「The DAO 事件」の際にイーサリアムブロックチェーンにおいて実際に行われました。
ハッキングされる以前までの記録があるブロックチェーンをハードフォークによって複製し、ハッキング自体をなかったことにしようとしました。ゆえに現在のイーサリアムブロックチェーンには、The DAO事件のハッキングは記録されていません。
ハードフォークのメリット
ハードフォークのメリットとしては以下の3点が挙げられます。
- 問題を解決できる
- 新通貨の付与
- 価格の上昇
問題を解決できる
ハードフォークは基本的に通貨をアップグレードする際に行われます。ゆえにそれまで通貨が抱えていたさまざまな問題を解決することにつながります。
新通貨の付与
ハードフォークによって新旧ブロックチェーンが一定期間存在しますが、ほとんどの場合旧ブロックチェーンは破棄されます。しかし開発方針の違いなどからコミュニティ内で分裂が起きた場合、旧ブロックチェーンは破棄されず存続します。
この場合新たな仮想通貨が誕生することになり、旧ブロックチェーンの通貨を保有していた人に新しい通貨が配布されることが多いです。
価格の上昇
ハードフォークが行われると仮想通貨の機能性がアップするため、仮想通貨の価格上昇を見込めます。
またハードフォークで新通貨が誕生する場合、その新通貨を獲得するために買い注文が増えることで、旧通貨の価格が上昇することが多いです。
過去に行われたハードフォーク
2016年6月イーサリアムクラシック (Ethereum Classic/ETC) の誕生
2016年6月、イーサリアムをプラットフォームとして誕生したトークン「DAO」がハッキングされ、50億円以上の被害が出ました。イーサリアム開発チームは、議論の末に「ハッキングされる前までのブロックチェーンを複製して新しいブロックチェーンとし、現在のブロックチェーンは破棄する」方針としました。しかし、このハードフォークが中央集権的だとしてコミュニティの一部が反対し、新しいブロックチェーンを支持しませんでした。彼らは、破棄される予定だった既存のブロックチェーンを支持し続け、イーサリアムは2つに分裂しました。新しい、ハッキングの記録がないブロックチェーンはそのまま「イーサリアム」の名前を引き継ぎ、既存の、ハッキング記録を残したままのブロックチェーンは名称を変え、「イーサリアムクラシック」となりました。
2017年8月ビットコインキャッシュ (Bitcoin Cash/BCH) の誕生
2017年8月、ビットコインのハードフォークでビットコインキャッシュが誕生したのは、ビットコインコミュニティ内の分裂が原因です。もともと、ブロックサイズが1MBであるビットコインには、ユーザー数が増加することで送金に時間がかかってしまい、送金手数料が高騰するという問題が起こっていました。これらの問題を解決するために、ビットコインには「SegWit2」という技術が実装されることが決まりました。しかし一部のグループは「SegWit2」よりも「ブロックサイズの拡大」をしたほうが効率的だとし、ブロックサイズを8MBへ拡大したビットコインキャッシュを誕生させました。
ハードフォークの今後の予定
バイトコイン (Bytecoin/BCN)
バイトコインは、2018年8月31日にハードフォークを実施します。これは、ネットワークの遅延を防ぐために、コンセンサスのアップデートを行うものです。そのため、新たなコインが発行されるといったものではありません。
ジークラシック (ZClassic/ZCL)
Zcashからフォークされた通貨ZClassicは、9月10日にハードフォークを予定しています。誕生する通貨は Anonymous Bitcoinです。新通貨をもらうには、ZClassicかBitcoinを保有しておく必要があります。なぜ2つの通貨からフォークされるのかというと、両方のコインのベストを組み合わせたデュアルフォークを作る必要性を感じたとのこと。Anonymous Bitcoinは、Equihashアルゴリズムの採用、zkSNARKによる匿名性の確保を特徴としています。
ハードフォークが相場価格に与える影響
急激な価格変動
ハードフォークを予定している通貨は、ハードフォークの前後で大きく値動きします。ハードフォーク前まで価格が上がり、直前~直後にかけて価格が下がります。例えば、5月15日にハードフォークを行ったビットコインキャッシュは、4月には65,000円だったものが5月初めには約198,000円まで、ハードフォーク当日は約156,000円となりました。このように、ハードフォークの時には、価格が大きく変動します。
ハードフォークの前後では、大きな価格変動があることがあります。ハードフォークに対する期待や不安などさまざまな思惑から急騰したり急降下することがあるでしょう。
取引所による取引の一時的な停止
ハードフォークが起こる前後では、取引所は送受金を停止することが多いです。ハードフォーク直後に起こるとされている、送金のバグなどを防ぐために行われます。
送金できなくなるため、一定期間決済には利用できなくなるでしょう。
ハードフォークの抱える問題
仮想通貨への信用性の低下
ハードフォークは、通貨の信用を低下させてしまうことがあります。例えば、イーサリアムが行ったブロックチェーンの巻き戻しに関しては、「不可逆で改ざんできないシステムが売りなのに、それを変えてしまうっておかしくない?」とコミュニティの一部が反対しました。
また新通貨を支持しない人々に通貨を売却されてしまい、価格が急落してしまう可能性もあります。このようにハードフォークを行うと通貨の信用性が低下し、価格が下がるリスクがあります。
リプレイ攻撃
ハードフォークの時には、リプレイ攻撃を受ける可能性があります。ブロックチェーンが2つに分裂した場合、どちらのチェーン上でも送金が有効になります。これを利用して片方の送金をもう一方のチェーンにおいても実行し、送金者の意図しない送金を行うことをリプレイ攻撃と呼びます。事態が落ち着くまで送金を行わないようにし、回避しましょう。
送金停止のため利便性が失われる
送金停止になり、支払いが一時的に利用できなくなります。ハードフォークの際に、多くの送金所では対象の通貨の送金が一時的に停止されます。支払いができなくなってしまうため、利便性が失われてしまいます。
バグ・エラーのリスク
ハードフォークすると、マイナーは新しいソフトウェアへの入れ替え作業が必要となります。ゆえにハードフォーク直後の新しいブロックチェーンのハッシュパワーは、旧ブロックチェーンよりも小さくなることが多く、送金のバグやエラーが起こりやすくなります。
ハードフォーク直後は通貨の送金を控え、ハッシュパワーがある程度高くなってから送金することをおすすめします。
ハードフォークに関するQ&A
保有している仮想通貨はどうなるのか
ハードフォークで通貨がアップグレードする場合、取引所に預けているのであれば基本的に何もする必要はありません。自分のウォレットを利用しているのであれば、ウォレットサービスからの案内を確認しましょう。
また新しい通貨が付与されるかどうかは、利用している取引所やウォレットサービスの方針によります。ハードフォーク前にお知らせがありますので、よく確認しておきましょう。
まとめ
仮想通貨のハードフォークについて解説しました。ハードフォークは互換性のない形で行われるアップグレードです。新しいコインが誕生するのは、コミュニティ内が分裂したとき。ハードフォーク直前は通貨の値段が上がりやすい特徴があります。ハードフォークの情報を元に、投資に活かしていきましょう。