- イーサリアムとはなにか
- イーサリアムの送金詰まりの原因と解決方法について
- イーサリアムの送金詰まりに関するよくある質問
暗号資産(仮想通貨)で2020年11月18日時点で時価総額第2位を誇るイーサリアムは、さまざまな分野において応用できるスマートコントラクトを組み込んだ分散型アプリケーションを提供しています。
イーサリアムのしくみ上では送金時間はわずか15秒と非常に早いスピードで送金できるとされていますが、実際には送金詰まりを起こしてしまうこともあり着金できずに不安を感じる人も多いです。
イーサリアムでの送金詰まりの原因とその解決方法について紹介します。
イーサリアム (Ethereum/ETH) とは
イーサリアムとはいったいどんなものなのでしょうか?ここではイーサリアムについて初心者にもわかりやすく解説します。
スマートコントラクトを実行できる開発プラットフォーム (DApps)
イーサリアムは暗号資産(仮想通貨) の時価総額がビットコインについで第2位を誇っています。国内の取引所ではイーサリアムは、通貨名称として使用されていますが、本来、通貨の名称ではありません。イーサリアム上で使用される通貨の正しい名称は、「イーサ (ETH) 」です。
イーサリアムとは「Decentralized Applications (DApps)」と呼ばれる、 分散型アプリケーションのことです。DAppsは通貨の取引情報が記録されたブロックチェーンのなかに、スマートコントラクトを組み込んで実行できる開発プラットフォームです。
イーサリアムではブロックチェーン上に、「だれがいつ送金したか」といった情報も記録し、さらにアプリケーションを保管できます。
単なるブロックチェーンではできないような当事者間の送金などの取引をプログラムとしてブロックチェーンに保管することで、執行条件を満たすと自動で契約が実行されます。
スマートコントラクトは暗号資産(仮想通貨)の取引だけでなく、さまざまな事業における企業間の重要な契約やサービスにも応用可能です。
このように開発プラットフォームをメインとするイーサリアムは、多種多様なアプリケーションの開発や実行に対応できるため、暗号資産(仮想通貨)を使った新しい基盤として期待されています。
仮想通貨の課題に取り組む
暗号資産(仮想通貨)の代表的通貨であるビットコインが使用するブロックチェーンは、さまざまな問題が指摘されています。
そこでイーサリアムはビットコインをはじめ暗号資産(仮想通貨)が抱える課題に対し、独自のアプローチによって取り組んできました。
たとえば「Proof of Stake」が、その1つです。ビットコインのネットワーク維持のためには膨大な電気代がかかってしまいます。
そこでイーサリアムはProof of Stakeと呼ばれるアルゴリズムを採用することで、電気代などの維持コストや環境への負担を軽減しています。
またネットワークが拡大することで、処理速度が遅くなってしまう「スケーラビリティ問題」については、ブロック生成スピードを15秒にするなど、マイニング効率を高めるために技術開発に力を入れています。
イーサリアム (Ethereum/ETH) の送金詰まりが起こる原因
さまざまな方法によって、暗号資産(仮想通貨)全体が抱える課題について取り組んでいるイーサリアムですが、送金詰まりが起こってしまうことがあります。なぜ送金詰まりが起こるのでしょうか?
ここではイーサリアムの送金詰まりが起こる原因3つについて解説します。
設定した手数料が安いと優先度が低下
イーサリアムでは設定した手数料によって、処理の優先度が決定されます。そのため設定した手数料が安いと、優先度が低下して、送金詰まりが起きやすくなるので注意が必要です。
手数料は承認作業を行うマイナーに対して報酬として支払われます。そのためマイナーは手数料の高い情報の方を優先して処理するため、手数料を低く設定する承認作業が行われにくくなり、結果的に送金詰まりの原因となります。
また、あまりに低い手数料を設定すると、マイナーが承認作業をしてくれずに送金できないかもしれません。送金が遅いと思ったら、まず設定した手数料を見直してみましょう。
取引所を経由すると処理時間が増加
イーサリアム側とは関係なく、取引所を経由すると取引所側の処理時間がかかって送金詰まりを起こすこともあります。
取引所では、ユーザーの資金や送金情報を正しく管理する義務があります。そのため取引所での送金処理にかかる時間をユーザー側が短くすることは不可能です。
取引所を経由して送金する場合には、時間に余裕をもって行いましょう。
ネットワークが混雑する
イーサリアムのネットワークが混雑するのも送金詰まりの原因の1つです。処理できていないトランザクションが増えると、処理業務が滞り、送金詰まりが発生します。
イーサリアムの承認は、ブロックチェーンのブロックに格納する必要があります。しかし1つのブロックに対して格納可能な容量は決まっているため、トランザクションが多すぎると、承認待ちのデータがどんどん溜まってしまい処理が遅れてしまいます。
イーサリアム (Ethereum/ETH) の送金詰まりの解消の流れ
イーサリアムの送金詰まりを解消する流れについて順を追って解説します。
Etherscanでトランザクションのナンス値を確認
送金詰まりが起きてしまった場合には、まずトランザクションの状態をチェックし、どういう状況かを把握しましょう。
自分のトランザクションをチェックするためには、「Etherscan」というサイトにアクセスします。手順は以下のとおりです。
- Etherscanにアクセス
- 検索窓に自分のイーサリアムアドレスを入力して検索ボタンをクリック
- イーサリアム利用履歴のなかからpendingと書かれたトランザクションを探す
- pendingと書かれたトランザクションの詳細ページへアクセス
- Click to see Moreをクリック
- Nonceの項目に表示された数字をチェック
詰まっているトランザクションのナンス値を確認
「Nonce (ナンス)」に表示された数字を「Nonce値」と呼びます。Nonce値とは自分のイーサリアムアドレスに付随した番号のことです。イーサリアムのトランザクションでは、Nonce値の順番で実行されます。
たとえばNonce値が104番のトランザクションが詰まっているとしたら、104番が実行されないと105番からのトランザクションは実行されません。
ウォレットでガス代を上げたトランザクションを送って上書き
イーサリアムではトランザクションの実行ごとに、ガス (Gas) と呼ばれる手数料が発生します。トランザクションが詰まってしまっている場合には、ガス代を上げたトランザクションを送って上書きしましょう。
ガス代を調べるためには「ETH GAS STATION」というサイトが役立ちます。ETH GAS STATIONでは、2分以内に実行される可能性が高いガス代「FAST」をチェックします。ここに表示されたガス代へと価格を上げて、トランザクションを上書きしましょう。
なお上書きの方法は、使用しているウォレットによっても異なります。PCでよく利用されてるイーサリアムウォレット「Metamask」を例に説明します。手順は以下のとおりです。
- Metamaskを起動して、詰まっているトランザクションを表示
- SPEED UPをクリック
- Fastをクリック後、保存ボタンをクリック
上記の手順で操作をすれば、自動で詰まったトランザクションと同じNonce値のトランザクションが発行されます。ガス代が高く設定されたほうが先に承認されるため、トランザクションの送金詰まりが解消できます。
また詰まったトランザクションが2つ以上の場合には、最もNonce値の低いトランザクションからSPEED UPをするようにしましょう。
送金詰まり時にトランザクションキャンセルをする
急ぎの場合には、pendingの状態のまま待っていれば、時間はかかっても処理が実行されますが、ICOなどで急な送金が必要な場合には、いつ処理されるのかわからないままの状態で放置はできません。
「イーサリアム (Ethereum/ETH) の送金詰まりの解消の流れ」内で解説したように、イーサリアムではウォレットアドレス毎にNonceと呼ばれる番号が割り当てられ、Nonce値の順番ごとにトランザクションの処理が行われます。
pending状態のトランザクションをキャンセルとは、詰まったトランザクション自体をなかったことにする操作です。つまり送金詰まりしていたNonceのトランザクションがキャンセルされれば、そのトランザクションが原因でpendingの状態となっていたそれ以降のNonceのトランザクションの処理がはじまります。
またMetamaskでは、トランザクションの履歴が消えるなどのバグが発生する可能性もゼロではありません。バグが発生するとMetamaskでpending状態のトランザクションのガス代を上げる操作ができなくなります。このような場合においても、トランザクションキャンセルをして送金詰まりを解消に役立ちます。
イーサリアム (Ethereum/ETH) のトランザクションのキャンセル手順
トランザクションのキャンセルにはMEW (My Ether Wallet)を使って行います。MEWでのトランザクションキャンセルは、あくまでもトランザクションが詰まってしまったときの解決方法です。
MEWでは公式サイトのヘルプページでも掲示していますが、キャンセルが毎回保証されるわけではありませんので注意しましょう。
MEWのトランザクションキャンセルの手順は以下のとおりです。
- MEWで自分のウォレットへログイン
- キャンセルしたいトランザクションのハッシュを確認する
- トランザクションの状態を確認する
- トランザクションのキャンセルを実行する
キャンセルしたいトランザクションのハッシュの確認
まずMEWで自分のウォレットへログインします。つぎにキャンセルしたいトランザクションの確認を行いましょう。トランザクションごとに割り当てられたトランザクションハッシュ (TxHash) を特定することで確認できます。
Metamaskを利用している場合には、Metamaskの画面上から該当するトランザクションをクリックするとハッシュが表示されるので特定作業は必要ありません。
MEWで自分のウォレットをアンロックし、画面右側に表示された「ETH」をクリックします。「Block」の項目がpendingと表示されていれば保留中、数字が表示されていれば処理が完了されている状態です。
トランザクションの履歴のなかから、該当するトランザクションを見つけましょう。トランザクションを見つけらたら「TxHash」をクリックし、TxHashをコピーしておきます。
トランザクションの状態を確認
キャンセル処理には、トランザクションの状態確認も必要不可欠です。MEWの「Check TX Status」にアクセスして、テキストボックス内に「キャンセルしたいトランザクションのハッシュの確認」内でコピーをしたTxHashを貼り付けます。
「処理状況を確認」ボタンをクリックすると、検索結果が表示されます。オレンジ色で「待機中の処理が見つかりました」とメッセージが表示されればOKです。
ただし緑色で「処理が見つかりました」とメッセージが表示された場合には、そのトランザクションはすでに処理されたブロックチェーンに載ってしまっているためキャンセルはできません。
また赤色で「対象の処理が見つかりません」のメッセージが表示された場合には、15秒ほど時間をおいてから再度「処理状況を確認」のボタンをクリックしましょう。Check TX Statusではクリックするたびに別のNodeを探すため、該当するトランザクションが見つかる場合もあります。
しかし何度クリックしても見つからない場合には、画面右上にあるドロップダウンリストから、「ETH (Etherscan.io) やETH (Infura.io) 、ETH (MyEtherWallet) 」などを選択してから再度「処理状況を確認」ボタンをクリックして探してみましょう。
キャンセル処理の実例
送金詰まりの原因であるトランザクションを見つけたら、さっそくキャンセル処理を行います。キャンセル処理は、トランザクションの上書きによって処理を行います。
まずは詰まってしまったトランザクションを、自分のアドレス宛に0ETH送金するトランザクションとしての上書きが必要です。上書き方法は以下の手順のとおりに行います。
- 画面をしたヘスクロール
- ウォレットをアンロック
- ETH Gas Stationを確認して、ガス代を変更する
- トランザクションの送出をクリック
- 「はい、確かです。処理を実行します。」をクリック
- Check Tx Statusをクリックして「処理が見つかりました」と表示されれば完了
ガス代を変更する際には、単位に注意が必要です。ETH Gas Stationで表示されるガス価格は「Gwei」ですが、MEWで表示されるガス価格は「Wei」となっています。そのためMEWでガス代を入力する場合には、末尾に0を9個加えた価格を入力するようにしましょう。
またCheck Tx Statusをクリックしても処理が見つからない場合には、20秒ほど時間をおいてから再度「処理状況を確認」をクリックしてみましょう。
イーサリアム (Ethereum/ETH) の送金詰まりのQ&A
イーサリアムの送金詰まりに関するよくある質問を4つ紹介します。
Etherescan (イーサスキャン) でトランザクションが見つからない場合は?
自分のトランザクションの状態をチェックできる「Etherescan」でトランザクションが見つからない原因の1つとして、トランザクションIDが間違っていることが考えられます。
トランザクションIDが間違っていれば、検索に引っかからないため見つかりません。トランザクションIDは英数字の文字列です。たとえばアルファベットの大文字や小文字の入力が1文字だけでも間違えたとしても、正しいIDではないため見つかりません。
誤入力を防ぐためには、手入力ではなくコピペ機能を使うことがポイントです。トランザクションIDを入力する際には、最初の文字から最後の文字まで確実にコピーをして、検索欄にペーストするようにしましょう。
またEtherescanのネットワークが混雑している場合にも、トランザクションの検索に時間がかかります。検索に時間がかかっているときには、しばらく時間をあけてから再度検索してみましょう。
なぜ暗号資産(仮想通貨)は価値が下がるの?
なぜ暗号資産(仮想通貨)の価値は下がるのでしょうか?現在の暗号資産(仮想通貨)は、日常生活への需要がなく、主に投資商品としての需要が高いことが価値が下がる要因の1つです。
暗号資産(仮想通貨)の多くが、ブロックチェーンを使った生活に役立つコンテンツを提供するビジネスをしています。
ビジネスがうまくいけば、そのコインの価格が上昇し、投資家たちが魅力を感じたプロジェクトのコインを購入することで、資金を確保できます。コインの増加とともに資金が増え、プロジェクトの数も多くなります。
暗号資産(仮想通貨)にかぎらず、投資商品は市場の売りと買いのバランスによって保たれているため、購入者が少ないと価格が下落してしまいます。
2017年のピークを境に、それまで盛り上がっていた仮想通貨は下落しました。理由は2018年以降に、マネーロンダリングなど暗号資産(仮想通貨)が悪用されることを懸念して、世界各国で厳しい規制が設けられためです。その結果投資家たちがか暗号資産(仮想通貨)を買いにくくなってしまいました。
ICO詐欺に遭う可能性があることから、国内でも2018年ごろから「インターネット上での広告規制」が実施されました。検索エンジンのGoogleやFacebookなどのSNSでも、暗号資産(仮想通貨)関連の広告が禁止された過去があります。広告が禁止されることで、新規顧客獲得のPR活動ができずに購入者が減り、結果的に下落しました。
また海外では暗号資産(仮想通貨)の取引を禁止している国もあり、まだまだ法整備も発展途上の段階です。規制が強まることで、投資家たちは将来の不安材料として判断するため、さらに仮想通貨は下落してしまいます。
また規制以外にも、自然災害で大きな被害が出た場合や、戦争やテロが発生するなど金融情勢が悪くなると仮想通貨の価格が下落する可能性もあるので注意が必要です。
どうしたら暗号資産(仮想通貨)の価値が上がるの?
それではどうすれば暗号資産(仮想通貨)の価値は上がるのでしょうか?価値が上がる主な要因は以下の2点です。
- 世界各国の規制が整って、暗号資産(仮想通貨)のプロジェクトへの投資が可能になる
- 投資以外の需要が出る
法制になどの規制が整うことによって、より安心で安全な暗号資産(仮想通貨)の取引へとつながります。その結果多くの投資家たちがコインを購入してプロジェクトへの投資が可能です。
また投資以外の需要が出ることも、価格が上がる要因となります。イーサリアムをはじめとする暗号資産(仮想通貨)の送金詰まり問題では重要なポイントです。
たとえばイーサリアムの技術を利用したゲームの人気がでて、多くのユーザーを獲得したとします。ゲームを作った人へユーザーが手数料としてイーサリアムを支払いますが、ユーザーの増加とともにネットワークが混雑し送金詰まりが起きる可能性が高いです。
送金詰まりの問題がなくなることで投資以外の需要が増えると考えられており、投資以外の需要が増えれば暗号資産(仮想通貨)の価値が上がるでしょう。
今後暗号資産(仮想通貨)はどうなりますか?
2020年の現在、暗号資産(仮想通貨)は一部のコインは日常生活への支払いにも対応していますが、そのほとんどが投資商品としての需要の方が圧倒的に多い状況です。またその需要についても、世界各国の規制によって制限されています。
同じ投資商品の株式は、サービスや商品を消費者へ提供することで利益を出して、株の価格が変動します。しかし暗号資産(仮想通貨)はいまだ、消費者へ価値を提供するための準備段階です。
今後価格を上げるためには、消費者へ価値を提供し、より多くのコインを投資目的以外として購入してもらうことが重要です。
イーサリアム (Ethereum/ETH) の送金詰まりに関するまとめ
イーサリアムでは、さまざまな暗号資産(仮想通貨)の課題に取り組んでいます。しかしイーサリアムはマイナーがトランザクションの承認を行うため、より高い手数料を設定してるトランザクションの方が優先度は高くなります。そのため送金詰まりが起きないようにするためには、適正な手数料を設定することも大切です。
またトランザクションをNonce値の順番ごとに行うシステムであることも送金詰まりが原因の1つです。万が一送金詰まりが発生した場合には、送金詰まりを起こしたトランザクションを上書きによってガス代を高く設定しなおす方法や、キャンセル処理を行うことによって送金詰まりを解消しましょう。