- フィンテック浸透の背景にはリーマンショックとスマホの普及が大きい
- 既存の金融サービスを簡易化する
- 成長産業であるため法整備などの課題もある
昨今、頻繁に新聞やメディアを中心に関心を集めているフィンテック。しかし、大半の人は、自身がフィンテックを活用したサービスを無意識に利用し、フィンテックへの理解には乏しい現状があります。
フィンテックの概要や具体的サービスを理解することは、金融業界を中心とするサービス形態の変化を読み取る一歩となり、フィンテック産業は今後さらなる成長を遂げていくことが予想されています。
フィンテックとは
フィンテックとは、英語で「FinTech」と表し、「Finance」と「Technology」が組み合わさってできた造語です。
金融(Finance)サービスと情報技術(Technology)とを結合させてサービスを展開する広義的な意味合いを持つため、理解がニュアンスに留まってしまいがちですが、代表的なサービスにはスマートフォンを使用した送金などがあります。
フィンテックを活用したサービスがカバーする領域は、個人の預金や決済から法人の経理まで非常に多岐に渡り、これまで銀行などの既存の金融サービスが行っていた業務が独立したサービスとして分配されています。
フィンテックが浸透した背景
フィンテックが浸透したのは、歴史的金融事件とテクノロジーの開発の時期がマッチしたことに由来します。アメリカを中心に2008年前後に急速に成長をみせ、日本では主に2015年前後から注目を集め始めました。
リーマンショック
フィンテックが浸透した大きな要因の1つに「リーマンショック」があります。「リーマンショック」は2008年に起きた事件で、世界的な投資銀行であるリーマン・ブラザーズが経営難で倒産してしまいました。
これにより、株価が大暴落をみせ、多くの人々が金融業界に対して不信感を抱き始め、金融業界の神話が崩れ始める形相となりました。
投資家や一般の人々への影響はもちろんの事、多くの人がリストラを受けることになり、そうした人々が優秀なスキルを元にフィンテックを利用したサービスの開発へとシフトしていき始めました。
つまり、人材の流れがフィンテックの浸透を後押ししたのです。
スマートフォン・PCの普及
「リーマンショック」と同時期には、iPhoneの発売をはじめとするスマートフォンの普及が成長を見せ始めた時期でもあります。
今日のフィンテックを活用したサービスの根幹を成す部分でもあるスマートフォンや高スペックPCの普及は、「リーマンショック」と並びフィンテックの浸透に大きな影響を与えました。
どのような点が革新的なのか
フィンテックの浸透は既存の金融システムを大きく変化させるキッカケとなり、今日の金融システムの形態を既に大きく変化させています。
変化の要因にはフィンテックを活用することで可能となる、専門性を要する金融サービスを個人レベルでも手軽に行うことができる点に由来します。
専門性が必要な分野で気軽に使える
金融サービスに関して、個人又は法人が利用する場合には、銀行などの専門知識を有する業者に依存する傾向がありました。しかし、フィンテックの浸透により、既存のシステムに依存しない手軽さを実現しています。
例を挙げるとするならば、個人で資産管理を行うアプリケーションの普及です。従来は、ノートに家計簿を付け、預金の管理は銀行へ赴き記帳を行う必要がありました。
しかし、フィンテックを活用したアプリケーションの利用では、口座情報と支出管理などが簡単に連携できます。つまり、どこにいても資産を可視化できるようになったということです。
いつの日からか、専門性を要する金融サービスを個人レベルで管理するのが当たり前になってきていることは、スマートフォンなどの普及とフィンテックサービスが浸透した権化と捉えることができるのです。
仮想通貨もフィンテックの1つなのか
既存の金融業界のシステムを揺るがすものとして近年注目され始めているものの1つに仮想通貨があります。
仮想通貨はブロックチェーン技術を活用した分散型管理を特徴とし、仮想通貨での支払いや仮想通貨のATMなどが世界的に普及をみせています。
つまり、仮想通貨もフィンテックを活用したアプリケーションとの類似点を有する点において、フィンテックの1つとして捉えることができます。
しかし、類似点があるという理由で仮想通貨をフィンテックと呼ぶには不十分です。この点においては、仮想通貨は法定通貨とは異なる通貨として手軽に管理し利用でき、場所を限定しない特性を有するので、フィンテックサービスをより一層加速させていきます。
よって、革新的であると認識されて、フィンテックの1つと捉えることができるという訳です。
フィンテックで具体的な応用産業
フィンテックを活用した産業は近年特に成長をみせており、アメリカを中心とした成長はアジア圏まで波及しています。ここで、フィンテックを活用した応用産業をカテゴライズしてみていきます。
決済・送金サービス
決済や送金サービスにフィンテックを取り入れたものは、認知や浸透も深いものとなっています。
LINE Pay
LINE Payは、アカウント登録をするだけで利用可能となる、ウォレットレスな決済サービスです。事前にアカウントにチャージしておくと、加盟店や支払いに対応しているところで決済できたり、割り勘や友人同士の送金も手軽に行うことができます。
楽天ペイ
楽天ペイは、クレジットカードでの支払いをスマートフォン1つで手軽に行うことができるサービスです。さらに、ネットショッピングにも活用でき、楽天以外のサイトでの買い物もスマートフォン1つででき、ポイントも貯まるお得感もあります。
会計・経理サービス
専門性を要する会計や経理のサービスをクラウド上で手軽に行うことを特徴とし、既存の専門性の高い人材への依存を軽減することに役立っています。
freee
freeeは、会計から人事、労務まで幅広くカバーするアプリケーションで、確定申告や日々の経理、給与計算から年末調整、入退社手続きまでを手軽に一元的に管理できます。
MFクラウド会計
MFクラウド会計は、銀行口座との連携によりデータ入力や仕訳、レシートなどを経費精算をスマートフォンで行うことができるサービスです。
家計簿・貯蓄サービス
会計・経理サービスの個人向けサービスとして、銀行口座の情報を入力すれば手軽に収支の管理を行うことが可能となっています。
Moneytree
Moneytreeは自動入力家計簿として機能し、クレジットカードや口座情報を登録しておけば自動的に情報が更新される特徴があります。対応しているサービスが2600を超えており、汎用性が高いとものとして人気のサービスです。
Zaim
日本最大級の無料オンライン家計簿で、750万人以上のユーザーを抱えているサービスです。
投資・資産運用サービス
フィンテックの浸透は資産管理の分野に留まらず、資産運用も可能にしており、投資に関して専門性を持たない個人でも気軽に利用できます。
Wealth Navi
Wealth Naviは、世界水準の資産運用を全自動化で行ってくれるサービスで、スマートフォンで管理でき運用の手間を省けることが大きなメリットであるので、投資に関する心理的不安を軽減しています。
THEO
THEOは、合理的な資産運用を行うことができるサービスで、円預金から世界の資産にバランスされた分散投資によって資産運用を果たします。
仮想通貨サービス
フィンテック加速を後押しする存在としての仮想通貨は、スマートフォンなどで管理可能で、法定通貨とは異なるデジタル通貨です。取引所と呼ばれるところに登録することで、法定通貨から仮想通貨を購入できたり、投機対象の1つとしてトレードが可能です。
bitFlyer
国内最大級の仮想通貨取引所、販売所でビットコインをはじめとする基軸コインから、メジャーアルトコインまでを取り扱っており、信頼性の高い取引所です。
coincheck
使いやす、チャートの見易さ、コインラインナップなどで人気であった国内最大級の仮想通貨取引所ですが、2018年初頭の通貨流出事件を境に利用者は減少しており、経営陣の刷新に伴うサービス再建を目指している取引所です。
フィンテック今後の課題
フィンテックは、技術的な革新や金融システムの形態や利用を変化させてきましたが、課題も残している成長産業の分野と捉えることができ、革新的な技術に法律やインフラが追いついていない現状があります。
法的環境整備
フィンテック産業が抱える重要な問題として法的整備があります。
金融庁は「電子決済等代行業者との連携及び協働に係る方針」を打ち出しており、各金融機関はサービスの展開と法整備の共存を図るフェーズとして動きをみせ始めたのは最近のことです。
しかし、仮想通貨やICOといった新興産業に対する明確な法整備は、国内だけでなく世界的にみても技術開発に遅れをとっている様相です。
APIの整備
API連携を促進させていくための整備もフィンテックが抱える課題の1つといえます。APIの整備には新規の投資が必要であり、成功したビジネスモデルの構築がなければ整備を進めていくことは難しいと言えるでしょう。
物理的な環境整備
フィンテックサービスのさらなる浸透には物理的な環境整備も急務です。
特に日本は、国際的な観点から、キャッシュレスの遅れに伴うフィンテックサービスを実用できるケースに限りがあり、海外企業との連携を加速させていく必要があります。
まとめ
フィンテックは、時流により日本でも浸透を見せ始めている成長途中の期待産業です。
国内では、革新的で手軽な利用体系にインフラが追いついていない現状があり、サービスのさらなる浸透と普及には法律との明確な線引きも必要となってくるため、グローバルな流れを追うことに加え、金融庁をはじめとする各機関の動向を注視していくことが必要です。