- HYIP (ハイプ) を仕かける側と仮想通貨との相性は良い
- HYIP (ハイプ) は考えられないほどの高利回りが特徴
- 運営会社はある日突然姿を消す可能性が高い
ビットコインなどの仮想通貨の普及にともない、「HYIP (ハイプ) 」と呼ばれる投資方法も多く見かけるようになりました。
仮想通貨とHYIPの相性は良いのですが、それは『運営側』にとってのもので、ユーザーには恩恵が少ないことがほとんど。
仮想通貨を利用すれば気軽にHYIPに参加できますが、そこには大きなリスクが潜んでいます。この記事では、HYIPの仕組みや危険性について詳しく解説します。
HYIP (ハイプ) とは
「HYIP (ハイプ)」とは「High Yield Investment Program」の略で、日本語では「高収益プログラム」と訳されます。
これまでもHYIPは存在しましたが、仮想通貨の普及とともに一気に広まっています。これは仮想通貨は一般的な金融機関を介す必要がなく、運営側が資金管理をしやすいためです。また仮想通貨が多くの「億り人」を生みだしたという事実から、普通では考えられない利回りでも可能だと思ってしまいやすいことも大きな要因です。
銀行などの金利が年利1%を大きく下回る一方、HYIPの投資では「日利1%」や「月利40%」というものもあります。
ちなみに「投資の神様」とも呼ばれるウォーレン・バフェット氏は、1万ドルの元手を800億ドル以上の資産に成長させましたが、平均すれば年利20%、月利1.6%、日利0.05%程度です。
HYIPでうたわれる利回りは、「投資の神様」ウォーレン・バフェット氏を軽く上回る運用が必要になる場合がほとんどです。
HYIP (ハイプ) の仕組み
HYIPは大きく分けて次の3つに分類されます。HYIPの全てが違法というわけではありませんが、どれも大きなリスクを抱えているという点では共通しています。
MLM (Multi-level marketing:マルチ・レベル・マーケティング)
MLMは「ネットワークビジネス」、「マルチ商法」などとも呼ばれます。特定商取引法においては「連鎖販売取引」と定義され、法律上の問題はありません。
仕組みは商品購入者が新たな営業マンとなり、新しい顧客を紹介すれば報酬が得られるというものです。企業としてはメディアに支払う広告宣伝費の代わりに、営業マンに報酬を支払うようになります。
計画通りに運用されていれば、長く続く可能性もあります。
ポンジスキーム
高利回りの運用をうたっておきながら、実際には資産運用せずに、出資金をそのまま返すというものです。
例えば出資金が100万円で、毎月5万円の配当が得られるとすると、20カ月は支払いが可能です。その間に新しい出資者が増えれば、配当を支払える期間が延びていきます。
そして運営側が最も資金が集まったと思うタイミングで、資金を持っていなくなります。もちろん違法行為です。
ねずみ講
ねずみ講はMLMとよく似ていますが、「無限連鎖講」と定義された、れっきとした違法行為です。
MLMでは新しい顧客の紹介料として報酬が得られるのに対し、ねずみ講では新たな出資者が支払った出資金の一部が報酬として得られるというものです。そして出資金の残りは、運営側の報酬になります。
ねずみ講の場合もポンジスキームと同様、出資金が事業の運営に使われることはありません。
ねずみ算式に出資者が増え続けることはなく、やがてどこかで行きづまります。その時この仕組みは破たんします。
なぜHYIP (ハイプ) に騙されてしまうのか
HYIPとは一言で言うとMLMを利用した投資詐欺のようなものです。多くの人がこの投資詐欺にひっかかってしまう理由には、「日利1%で利益がでる」という謳い文句に惹かれてしまうから。
単純計算で100万円を日利1%で運用すると毎日1万円の利益、月に30万の不労所得です。こうした甘い誘惑に惑わされた結果HYIPに騙されるという結果になるのです。
冷静な判断ができずに騙されてしまう
先述したとおり、HYIPはありえない投資詐欺なのですがなぜ冷静な判断ができずに騙させてしまう人が多いのでしょうか? その理由は数字の伝え方にあります。
たとえば100万円を日利1%で365日運用すると、年間に複利で約3778万円の利益が出ます。最初にこの話をされると胡散臭く思いますが、それを月単位に直して伝えると、100万円を預けると次の月は134万円になります。すると現実的に思いませんか。
実際には複利で運用するのでありえない額になっていくのですが、最初の入り口で多くのほとは騙されてしまいます。
知人・有名人を利用したHYIPおよびセミナーで騙されてしまう
たとえば、知人からの紹介でHYIPを知った場合、信じてしまい騙される可能性は高いでしょう。しかし紹介した知人も実はHYIPについてそれほど知識がないことがほとんどです。その理由はHYIPはMLM的な一面があるので人を紹介すれば紹介料がもらえるからです。
また有名人もやっているから、という安易な理由をセミナーで聞いてはじめてしまうと人もいます。
分かっていて騙されてしまう
最初に怪しいとわかっていても勧誘者の達者の口ぶりなどにより手を出してしまうことが多いです。投資案件については十分に事前にリスクとリターンを調べてから、最悪お金がなくなっても大丈夫なくらいな資金で投資をすることになります。
仮想通貨の市場自体がまだまだ未完成な市場です。まだまだ確実性が少なく疑ってかかるくらいがちょうどよいでしょう。
仮想通貨のHYIP (ハイプ) はハイリスク・ハイリターン
ハイリターンが盛んにうたわれるHYIPですが、それを補ってあまりあるハイリスクが存在します。
会社が飛ぶことがある
HYIPを行う会社はその事業が何年も、何十年も続くとは思っていません。てっとり早く資金を集め、資金が最大になった時点で資金を持ち逃げします。それを「飛ぶ」といいます。
当然ですがいつ「飛ぶ」かはわかりません。ある日突然サイトが閉鎖され、連絡が取れなくなります。
出金不能になることもある
運営中は、自分の資金がどうなっているかサイトなどで見ることができます。最初に説明を受けた通り、日利1%や月利40%といった利益を出しているように見えます。
しかし会社が「飛ぶ」と、出金ができなくなります。仮想通貨の場合は一般の金融機関の口座とは違い、そこから会社や運営主の身元を特定することが難しくなっています。
また飛ぶ前の正常に運用されているように見える段階でも、出金できるとは限りません。サイト上で自分の資産が順調に増えているように見えても、「出金が可能になるのは○月○日以降」といった制限があり、その間に飛ぶ場合もあります。
出資金は会社側の管理下にあり、自由にできるわけではありません。どんなに増えているように見えても、大きなリスクを抱えた状態です。
実際にあったHYIP (ハイプ) 事例
Right Rise (ライトライズ)
イギリス政府公認で、月利40%という高利回りでHYIPの中でも優良投資案件だとされていました。主に日本で人気になったHYIP案件です。しかし最終的に運営会社は飛んでしまい、詐欺だったことが判明しています。
HYIPのモデルとしては「高速道路の速度超過を取り締まるシステムを開発し、イギリス政府からの公認も得ており、速度超過の罰金の40%が配当として受け取れる」というものでした。
飛ぶまでは実際に配当を引き出すこともできていました。そのため初期の段階で参加した人が実際に現金化する様子を見て安心し、参加する人も多くいました。
USI-TECH (ユーエスアイ・テック)
50ユーロのパッケージを購入することで日利1%の配当が得られるというものです。仮想通貨のトレードやマイニングなどで運用を行い、利益を出すというものです。
現在もサイトは運営されており、飛んでいるわけではありませんが、いつ飛んでもおかしくない状況です。
投資した資産は仮想通貨TechCoinとして会社側に預けた状態になっています。そして、自分のTechCoinの保有状況をいつでも確認できます。
しかしそのTechCoinを上場している取引所はありません。別の通貨に両替したり、現金化したりすることができません。
会社側がオープンしているオークションサイトもありますが、TechCoinの利用はほとんどできません。もしオークションサイトを利用したいと思ったとしても、現金化できないTechCoinを欲しいとは思う人がいるでしょうか。
会社側としては情報を出しつつ事業の存続を図っているような姿勢はうかがえますが、会社の登記情報などにもおかしな点が多く、飛ぶことを前提に作られた会社のように見えます。
BitClub Network (ビットクラブネットワーク)
ビットコインのマイニングによって資金を運用しています。ただし2018年後半にビットコインが値下がりしてからは、赤字になるとの理由でマイニングを中断し、配当の支払いも行われていません。つまりほとんどキャッシュがない自転車操業状態だったということが分かります。
ビットクラブについては日本でも何人かのインフルエンサーによる宣伝が行われ、それなりに出資者もいるようですが、インフルエンサーらのこれまでの実績を調べてみると、信用することが難しい人が多くいます。
まだ会社側が飛んだわけではありませんが、このまま配当が支払われず、倒産するか飛ぶかする可能性が高いと言えます。
HYIP (ハイプ) で出た利益に税金はかかるのか
結論から伝えると、HYIPで出た利益には税金はかかります。日本の税率は累進課税方式を採用していますので、稼いだら稼ぐに伴ってその分支払う税金の額も増えていきます。
仮想通貨は雑所得に分類される
仮想通貨で儲けた利益は「雑所得」に分類されます。厳密にいうと年に20万円以上仮想通貨で儲けが出た場合も税金が発生します。その場合は確定申告も必要です。
仮想通貨で得た収入は会社の給料と違って、税金が天引きされることはありません。ですので仮想通貨で利益が出た場合は自分で確定申告が必要なのです。
HYIPで出た利益についても同様
先述したとおり、仮想通貨で得た利益には税金が発生します。したがってHYIPで儲けた場合も同様です。HYIPで利益が出ても確定申告が必要です。
先ほどの例でいくと100万円を日利1%で運用すると次の月には34万円の利益が確定しますので、その時点で確定申告は必須になります。
ちなみに雑所得は総合課税となります。
仮想通貨取引は安全性を第一に考えよう
仮想通貨取引はまだまだ未開拓の分野です。ですので投資詐欺やマルチ商法を取り締まる環境も整っていません。
その投資話が真実か否かを判断するのは、初心者にとっては難しい判断と言えるでしょう。話だけ聞いていると儲けそうな気がしたり、仮想通貨ということ言葉自体に夢を見てしまうこともあるでしょう。
しかし現実はそんなに甘くありませんし、上手くいきません。安全性を第一に考えて信憑性を見極めて、少しでも怪しいと思う投資案件には手を出さないようにしましょう。
まとめ
法律的には問題のないHYIPもあり、必ず詐欺に遭うというわけではありませんが、非常にリスクの高い投資案件です。驚くほどの高利回りをうたう案件には、注意してください。
手ぐすね引いてカモを待っている悪徳業者は、情報をあまり持たない情報弱者を狙っています。気になる案件があれば必ずネットや周りの人の意見を参考にしてください。聞きたくないことにフタをして、聞き心地のいい言葉ばかりに耳を傾けていると、大きな落とし穴にはまりこんでしまいます。