- Segwit2Xはブロックサイズを大きくする方法
- Segwit2Xを巡って論争が繰り広げられた
- Segwit2X導入によってビットコインキャッシュやB2Xが誕生
仮想通貨にはハードフォークやソフトフォークという言葉があります。どちらもシステムを変更する際に用いられる言葉ですが、各フォークに欠かせない情報が「Segwit」、もしくは「Segwit2X」です。
SegwitもSegwit2Xもある課題を解決するためのプロジェクトのことですが、2017年に起きたビットコイン分裂騒動の時も両者の導入を巡ってコミュニティで大きな論争が勃発しました。
ハードフォークやソフトフォークに関する情報は仮想通貨市場のチャートにも大きな影響を与えるため、その原因となるSegwit2XやSegwitを理解しておくと今後の投資判断に役立ちます。
Segwit 2Xとは
Segwit2X(セグウィットツーエックス)とは仮想通貨の取引データを保管する「ブロック(格納庫)」のサイズ容量を増やすことです。Segwit2Xを導入した仮想通貨は、一度に保管できるデータ容量が増えることで、これまでよりスムーズな取引や送金が行えます。
Segwit2Xを詳しく理解するには、まず知っておかなければならない情報があります。
- スケーラビリティ問題
- Segwit(セグウィット)との違い
特にSegwitとSegwit2Xの違いを把握することは今後の仮想通貨投資にも大いに役立つでしょう。
スケーラビリティ問題を解決する手段
Segwit2Xは仮想通貨のスケーラビリティ問題を解決します。スケーラビリティ問題とは、送金や取引を行った情報を格納する保管庫「ブロック」の容量不足によって発生する送金遅延問題や送金トラブルのことです。主にビットコイン(Bitcoin/BTC)で指摘される問題で、過去にもスケーラビリティ問題により仮想通貨市場に大きな影響を与えました。
ビットコインは10分ごとにブロックを生成し、10分の間に行われた送金情報をそのブロックへ保管します。ブロックにはサイズ上限があり、ビットコインの場合は1MBです。1ブロックに対して1MBという容量は、件数に換算すると約4,000件。つまり、ビットコインは10分に4,000件ほどの取引を処理できます。
ただ、この1ブロック4,000件という数字は決して良いものではありません。
ビットコインは仮想通貨の基軸通貨。それだけ取引量は多く、4,000件程度ではとても全ての処理に対応できません。特に、ビットコインの価格が200万円に達した2017年12月には処理できない取引で行列ができるほど。約20万件以上のデータが処理できずに遅延を起こしていました。
このスケーラビリティ問題を放置しておくことはできません。投資家にとってみれば好きなタイミングで取引を行うことができず、またビットコインの開発チームにとっても、通貨に対する信用が落ちるので、できるだけ早期に解決しなければならない課題です。
そこで導入されたのが「Segwit」と「Segwit2X」です。
SegwitとSegwit2Xの違い
SegwitとSegwit2Xは、どちらも仮想通貨のスケーラビリティ問題を解決するために生まれました。両者はプロジェクトの名称で、仮想通貨のシステムに導入することで課題の解決を図ろうとしたのです。
ただ、SegwitとSegwit2Xは少しだけ特徴が異なります。
Segwitとは
Segwitはブロックに保管するデータを小さく圧縮することです。仮想通貨にSegwitを導入すると、1つのブロックに入るデータ量は増えます。
たとえば、ブロックサイズ1MBに対して取引データが1MBであれば、そのブロックには1つのデータしか入りません。そこで、データを圧縮し0.5MBまで小さくすると、1つのブロックに2つのデータを保管することができます。正確には署名データと呼ばれる部分をブロックとは別のスペースに保管することで、1つのブロックを広く利用することができるのです。
2017年7月には、ビットコインにもこのSegwitが導入されました。今までの取引データを圧縮することで格納できる量が増え、スケーラビリティ問題解決の大きな一歩となりました。
Segwitの導入は仮想通貨の基本的なシステムを変更する必要がありますが、データ量を圧縮するだけなので大きな負荷はかかりません。そのため、従来の仮想通貨システムをほんの少しだけアップデートした「ソフトフォーク」が実現します。ソフトフォークも簡易的なシステム修正に利用され、アップデートが行われる度に徐々に課題を解決して生まれ変わるのです。
Segwit2Xとは
Segwit2Xとは、データを格納するブロック自体のサイズを大きくすることです。ビットコインの場合であれば基本の1MBというサイズから、2MBや3MBへ変更しますが、ブロックサイズが大きくなることで保管できるデータ量が増えスケーラビリティの課題解決に役立ちます。
ただし、ブロックサイズを変更するためには仮想通貨のシステムを大幅に書き換えなければなりません。この場合、ソフトフォークでは対応できず、大規模なシステムアップグレードである「ハードフォーク」が行われるのです。ハードフォークが実行されると、もともとの仮想通貨とは別に新たなコインが誕生することがあります。これが「仮想通貨の分裂」です。
過去にはビットコインのスケーラビリティ問題を解決するために、SegwitとSegwit2Xを巡る激しい論争が巻き起こりました。最終的にはもともとのビットコインにはSegwitを採用、それに反対した開発グループ離反組がSegwit2Xを実装した新たな仮想通貨「ビットコインキャッシュ(BitcoinCash/BCH)」を生み出しました。
Segwit2Xを巡る論争
ビットコインへSegwit2Xを導入する問題は、ビットコインのコア開発チームを中心に大きな論争へと発展しました。きっかけはビットコインのスケーラビリティ問題であり、Segwit賛成派もSegwit2X賛成派もこの課題の解決が最優先事項だったわけです。
最初に論争を開始したのはSegwit賛成派。つまり、ビットコインの取引データを圧縮させてスケーラビリティ問題を解決しようとしました。Segwitを使えばビットコインを分裂(ハードフォーク)させることなしに課題の解決が図れるので、論争前の2014年にはSegwit賛成派が主流を占めていました。
しかし、ビットコインのソフトフォークを快く思わない人もいました。それがSegwit2X賛成派です。
NY合意
Segwit2Xをビットコインに導入するとブロックサイズ自体を大きくしてしまうので、Segwitと同様にスケーラビリティ問題は解決できるでしょう。しかし、Segwit2Xを実施するにはハードフォークが必要で、最悪の場合はビットコインが分裂してしまう可能性もあります。この部分がSegwit2X反対派には理解できません。
そこで、Segwit2X賛成派は2017年5月に、DCG(デジタル通貨グループ)の創業者であるBarry Silbert氏が主催でニューヨーク合意を行いました。この会議でSegwit2X導入後には2MBへブロックサイズが拡張することが提案され、主にSegwit2X賛成派から多くの支持を得たのです。
支持派の意見
Segwit2Xを支持する多くの人たちはメジャーマイニングファームを運営管理人。マイニングファームは、大規模なマイニング設備と中国の安価な電気代を活用し、さらに多くの一般ユーザーからマシンパワー(コンピュータ演算能力)を借り大々的な規模を誇ります。
彼らが危惧したのは、仮にSegwit実装によってソフトフォークが実現してしまうと、自分たちが使っている高性能マイニング機の互換性がとれず直接的な売上減少に繋がってしまうことです。つまり、Segwit2Xを巡る論争のポイントは、いつの間にかスケーラビリティ問題解決よりも、自分たちの利益の最大化に差し替えられていました。
反対派の意見
一方のSegwit2X反対派の多くはビットコインのコア開発メンバーが大半。こちらはマイニングの収益性は気にせず、とにかく強硬なハードフォーク実施に危機感を抱いていました。
しかし、Segwit2X賛成派の多くはマイニングファームや大手取引所を運営する面々。彼らは既にビットコインコミュニティ内で大きな発言権を持ち、反対派もむげに提案を却下するわけにはいきません。
Segwit2Xの無期限延期
業を煮やしたSegwit2Xは強引にハードフォークを敢行してしまいます。2017年8月のことです。ビットコインにSegwit2Xを実装するために、新たに「ビットコインキャッシュ」を発行しました。ビットコインキャッシュは取引量に応じてブロックサイズを変更でき、最大8MBまで拡張が可能です。
一方、2017年11月にもさらにビットコインの分裂が発表された。実はこちらのハードフォークが正式なSegwit2X実装版で、名称は「Bitcoin2X(B2X)」と呼ばれます。しかし、このハードフォークは再びビットコインコミュニティの意見が分かれ無期限延期になりました。
その後、2017年12月に再びB2Xのハードフォークが机上にあがります。そして12月28日に新しく生まれ変わったビットコインB2Xが誕生。2018年8月時点で既にブロックサイズは4MBまで拡張されており、Segwit2Xの恩恵を垣間見れます。
Segwit2Xのまとめ
- Segwit2Xはブロックサイズを大きくする方法
- Segwit2Xを巡って論争が繰り広げられた
- Segwit2X導入によってビットコインキャッシュやB2Xが誕生
仮想通貨にはハードフォークやソフトフォークという言葉があります。どちらもシステムを変更する際に用いられる言葉ですが、各フォークに欠かせない情報が「Segwit」、もしくは「Segwit2X」です。
SegwitもSegwit2Xもある課題を解決するためのプロジェクトのことですが、2017年に起きたビットコイン分裂騒動の時も両者の導入を巡ってコミュニティで大きな論争が勃発しました。
ハードフォークやソフトフォークに関する情報は仮想通貨市場のチャートにも大きな影響を与えるため、その原因となるSegwit2XやSegwitを理解しておくと今後の投資判断に役立ちます。