- DAOは自律分散型組織の略で「The DAO」のサービスで利用された
- 「The DAO」システムの脆弱性をつき約50億円分のETHが盗まれる
- 「The DAO事件」後、ETHはハードフォークを行いETCと分裂した
2018年1月仮想通貨NEMが仮想通貨取引所Coincheckから580億円相当盗難された事件が世間を騒がせました。
仮想通貨のハッキングの事件は世界で多く起こっていますが、その中の一つに「The DAO事件」がありました。今回は「The DAO事件」と関連性のあるDAOをまとめます。
DAO (自律分散型組織) とは
DAOと「The DAO」は別物
「DAO」とは(Decentralized Autonomous Organization)の略称になります。日本語で「自律分散型組織」と訳されます。
「The DAO」はDAOのシステムを利用して行われたサービスのことを指します。ドイツのスタートアップ「Slock.it」により始められた、自立分散型投資ファンドのサービスです。
投資ファンドとは、従来投資者が管理者のもとに資金を集め管理者の決めた投資先に投資をしていくサービスですが、「The DAO」は独自トークンを用いて投資者の投票をもとに投資をしていきました。
管理者による支配を受けない
「The DAO」はDAOのシステムを利用したサービスです。DAOは「自律分散型組織」で非中央集権的システムなので管理者が存在しません。中央集権的なシステムではないので管理者に支配されることがありません。
イーサリアム (Ethereum/ETH)のスマートコントラクト技術を使用
DAOはイーサリアム上のブロックチェーン技術のもとに構築されたシステムで、スマートコントラクト技術を仕様しています。スマートコントラクト技術とは賢い契約という意味で様々な契約を自動的に行うことができる技術です。かわされた契約は、イーサリアムのブロックチェーン上に書き込まれるので不正のできない信頼された情報になります。
「The DAO」の目指している管理者のいない自立分散型投資ファンドは、イーサリアムのスマートコントラクト技術を利用しているので契約を自動で行うことができます。
The DAOはICOによって約1200万ETHを調達
The DAOはICO時期にかなりの注目を集め一ヶ月の間に約1200万ETHを調達しました。当時のレートに換算すると、約150億円ほどです。短期間での、莫大な資金調達は世界から注目を集めました。
ICOでは、The DAOの独自トークンであるDAOが発行され、1ETHを投資することで100DAOを受け取ることができました。DAO自体を売買することでも利益を得られますが、主な用途としては保有率によるThe DAOからの利益の分配でした
自己責任
「The DAO」は投票をもとに投資を行っていくサービスです。投資には絶対はないため勝つことも負けることもあります。自己責任のもとに投資を行っていく必要があります。
また、「The DAO」にはSplitというシステムがあります。Splitは投票結果に賛成できない場合、「The DAO」の管理アドレス内にある投資者の資金を別のアドレスに移すことができるシステムです。このSplitシステムにより投資者は投資者自身の責任のもとに投資を行っていくことができます。
「The DAO事件」とは?
「The DAO」は、2016年5月にイーサリアム上のトークンを発行してICOを行いました。その後「The DAO」のシステムで問題点が指摘され、6月にその問題点をついてハッキングされ約50億円分のETHが盗まれました。「The DAO」の管理アドレス内の投資者の資金を移動させるSplitシステムを不正利用されてのハッキングでした。
結果として送金後27日間は資金を使用できない制度があったため、その期間の間にハードフォークで送金の記録を取り消すことで問題を解決しました。
イーサリアム (Ethereum/ETH) のハードフォーク
「The DAO事件」後にイーサリアムとイーサリアムクラシックに分裂しました。
イーサリアムクラシック (Ethereum Classic/ETC) の誕生により事件解決
送金後27日間は使用できないロックアップのような制度があったため、その猶予期間に対策が議論されました。議論ではハードフォークをして今回のハッキングをなかったことにするという案がありました。しかしハードフォークを行い送金自体をなかったことにする行為は、「自律分散型組織」としてのあり方に矛盾を残すとして議論が起こりました。
結果としてハードフォーク案は実行され不正送金の記録自体がなかったことになりました。しかしその結果に納得しない人たちがイーサリアムから分裂した新しい仮想通貨イーサリアムクラシックを誕生させました。このイーサリアムクラシックはより徹底した非中央集権的な仮想通貨を目指しています。
中央集権的な決定ではないのか?
「管理者によって送金の記録を取り消すためにハードフォークを行うことは、中央集権的な組織の行動とも言え、本来の目的であった分散型組織としての在り方と矛盾するのではないか?」というのがハードフォークしないことを選んだイーサリアムクラシックの言い分でした。
イーサリアム (Ethereum/ETH) 自体の問題ではない
「The DAO事件」は「The DAO」のシステムに欠陥があったことによりおきた事件で、あくまでイーサリアムのシステム自体に問題があったわけではありませんでした。
イーサリアムクラシック (Ethereum Classic/ETC) の脆弱性
イーサリアムクラシックは、2020年8月には一週間の間に2回もの51%攻撃を受けました。世界中の暗号資産(仮想通貨)取引所がイーサリアムクラシックの上場について懸念を示すようにっています。
イーサリアムクラシックは、ハードフォーク後からハッシュレートの著しい低下という問題を抱えており、その問題を突かれた攻撃を受けているようです。イーサリアムクラシックのネットワークを管理するETCラボはこれらの問題を解決するための施策を打っています。
DAO (自律分散型組織) についてのまとめ
「The DAO事件」は「The DAO」の脆弱性をついておきたハッキングでした。根本のイーサリアムのブロックチェーンがしっかりしていても、利用するシステムにどこかほころびがあればハッキングにあってしまいます。システムの脆弱性をつかれる問題は、これから多くのブロックチェーンを扱う人が心得ていく問題になります。
また、ハッキングに対抗するために行ったハードフォークが、イーサリアムとイーサリアムクラシックの分裂のきっかけになりました。ハッキングを防ぐためとはいえ分散型組織としてのあり方に矛盾が生じると、議論が起こるきっかけになりました。ハードフォークしたイーサリアムクラシックは、より徹底した非中央集権的な仮想通貨を目指しています。