- 損切りは含み損となっているポジションをしまい損失を抑える技術
- 損切りを駆使することで負けを小さくして勝ちを積み重ねられる
- 投資で安定した利益を得るために損切りは必要不可欠
株式やFXなどの投資では、相場を相手に資金を投じることになります。
相場は常に変動し、投資家の予想通りに動くとは限りません。想定と違う場合に損失を抑える方法を損切りといいます。損切りを駆使することで、最終的な利益を高められます。]本記事では損切の基本事項や具体例、活用方法を解説します。
損切りとは
損切りとは保有する株式や銘柄が含み損を抱えている場合にポジションを決済することで損失を抑えることです。
損切りはロスカットやストップロスとも呼ばれ、損切りを行うことでその時点以上の含み損を回避して、より大きな損失を防ぐことができます。維持するポジションが予想した変化を見せない場合に有効な方法です。
また保有株式や銘柄が含み益を抱えている状態で、ポジションを決済して利益を確定する行為は「利食い」と呼ばれます。
損切りのメリット
損切りのメリットは主に下の2つです。
- 含み損の拡大を防げる
- 資金効率が良くなる
メリット1 含み損の拡大を防げる
損切りのメリットは損失の拡大を防ぐ点です。
含み損はポジションを維持している状態なので、まだ利益に変動する可能性を秘めています。しかし、相場が転換せず現在のトレンドが続いた場合、含み損は増えて最終的な損失が増大します。
投資を続けるにはいかに損失を減らして、利益を多く上げられるかがポイントです。損切りはその時点ではマイナスの結果を出しますが、含み損を放置した場合における大きな資産の減少を防ぎます。
メリット2 資金効率が良くなる
投資ではいかに効率よく資金を投じられるかが重要です。使用する資金を増やすほど大きな利益を得やすくなります。損切りを行うことは、損失の拡大を抑える他に資金効率を高める効果もあります。
含み損状態のままポジションを維持することは塩漬けと呼ばれています。利益を得られる期待が薄いポジションを維持したままでいると、結果的な損失が増え別のポジションを取るための資金効率が悪くなります。次の投資で大きな利益を上げるためにも損切りが必要になります。
損切りのデメリット
損切りはロスカットを見送ることで発生する損失の拡大を防ぐ目的がありますが、相場の変化が見抜けずにロスカットをした場合のデメリットも存在します。ロスカット後に相場が転換することで、ポジションを維持することで手に入った利益を逃す点です。
このデメリットに関しては、投資家に対する心理的なダメージが入ります。しかし、資産を守り今後の新しい投資のために行動をした点で、一定の評価が必要です。投資は単一的な視点で見るのではなく、最終的な結果を出すことが大事になってきます。
損切りルールの基本
損切りのルールを設定する際には、以下の3つの基本ポイントを意識すると良いでしょう。
- 損切りは予想するシナリオに合わない値動きをしたときに行う
- トレードの時間軸が長くなれば損切りの値幅も大きくなる
- 損切り目安は最適なものを選択する
ポイント1 損切りは予想するシナリオに合わない値動きをしたときに行う
投資を行う際に、投資家は相場を観察して今後の値動きを予想しポジションを持ちます。何も考えずに投資を始める投資家がいるなら、その投資は考え方から見直す必要があります。
しかし、相場の世界は投資家の思い通りにいかないことも多く、予想とは逆の展開をすることもよくあります。
そのような相場に遭遇した場合は、あらかじめ定めたルールに従い行動することが必要です。損切りは投資家の予想する値動きから外れ、大きな損失を生むことが想定された場合に行います。
例えば上昇相場でポジションを持つ投資家が、中期線で反発を続けていることに注目し、「このまま中期線を割らない限り上昇を続ける」と想定した場合、損切りのポイントは中期線を割る値動きとなります。
ポイント2 トレードの時間軸が長くなれば損切りの値幅も大きくなる
中期線割れをロスカット基準にする場合、問題の中期線割れがどの程度なのか定める必要があります。

上記の図を見ると3つの例があります。Aではローソク足が中期線を超えかかっている状況で、Bではローソク足の半分が中期線を割っています。また、Cではローソク足が完全に中期線の下にあります。トレードの方法によって、ABCのどのラインで損切りを設定するかが変わります。
単純に5分足と日足チャートを比べると、時間足を大きくするほど1メモリの値幅が増加します。そのため5分足ではすぐに損失分を取り返せると考え、BCのイメージで損切りを想定できます。また、日足ではメモリごとの値幅が大きいため、Aの段階で損切りを想定するのがベストといえます。
ポイント3 損切り目安は最適なものを選択する
損切りにおいてはただ中期線とローソク足の位置関係を見るだけでなく、さらに具体的な定め方があります。

上記のチャートを見ると、ローソク足が中期線の割り込みをしているとともに安値のラインとも一致しています。このような場面では、安値のラインを基準に損切りを決めることがあります。何をもって損切りラインを設定するかですが、主に以下のような考え方ができます。
・直近の値動きが強く、買いが強いと判断できる
・中期線割り込みでの出来高が少ない
・安値ラインでの反発が多い
また、利用するローソク足によって損切りラインの判断は変わるため、損失額が大きくなると想定される場合は素早い段階での損切りを行うのがいいでしょう。
損切りの目安の具体例
損失額や値下がり率
損切りラインを定めるために基本的な方法は、エントリーラインに対してどれくらいの損失を許容するかという点で決めることです。この「どれくらい」を決めるための方法として、損失額と値下がり率といった2つの考え方があります。
まず、損失額で損切りラインを定める考え方は、総資産額に物差しを置く場合に取るべき方法です。例として投資家が100万円の資金を投じているとき、2%の損失で抑えたい場合は2万円の損失でロスカットを取ることになります。
この場合、全体的な損失額は全て2万円なので変化がありません。しかし、銘柄ごとの値下がり率では大きな違いが出てきます。総資産における損切り額を定める場合、株価や保有数により損切りラインが決定する点がポイントになります。
一方で平均取得価格に物差しを置くと、値下がり率で損切りラインを定めることになります。値下がり率5%を想定すると以下のようになります。
平均取得価格に重点を置くと値下がり率が一定になる代わりに、株価や保有数により損失額が変動します。結果として総資産額における損失割合が変動します。
安値や節目

上記の2つの損切りラインは、それぞれ安値と節目によって決められています。
安値は売り買いのやり取りの結果作成された価格の転換点といえます。節目は区切りがいいため気分的な転換の境目といえます。
この2つの基準はエントリーポイントとしても重視される所で、安値や節目で価格が転換しない場合はさらにトレンドが続くだろうと予想できます。
さらに、安値と節目の損切りラインはあらかじめ定められているため、逆指値を入れる点としても優れておりロスカット設定で損失を抑える効果もあります。
【逆指値を入れる際の注意点】
1つ気をつける点に、逆指値狩りという手法があります。逆指値が多い価格を割った後に反対の値動きをされてしまうことです。大口の投資家により行われ、わかりやすい価格帯が狙われます。安値や節目で損切りラインを引く際は手動か、損切りラインをずらすといいでしょう。
テクニカル分析
テクニカル分析はチャートの流れを分析することです。
テクニカル分析では相場の転換に合わせて損切りラインが常に変化していくため、最新の値動きに合わせた損切りラインの設定が可能です。一方で、安値や節目のように決められた基準を使用しないため、逆指値は入れにくくなります。
常に状況が変動するため逆指値狩りにあいにくくなりますが、ふるい落としとして一過性に移動平均線を無視した動きをする場合があります。ふるい落としにあうことはあっても、基本的には損切りラインは変更してはいけません。
損切りラインの設定には以下のようなシグナルを用います。
損切りを徹底するコツ
自身で決めた損切りルールを徹底するためには、以下の3点を抑えておく必要があります。
- トータルで勝つことを意識する
- 逆指値注文を設定する
- 自動売買システムを使う
コツ1 トータルで勝つことを意識する
投資では総合的に勝つことを意識すると、最終的な利益を大きくしやすいです。例えば、5回のトレードを行い3勝2敗と2勝3敗では、3勝2敗の方が勝ちが多く最終的な利益が大きくなります。
また、損切りを意識すると、1回当たりの負けによる損失が抑えられます。
投資においてできるだけ多くの勝ちを積み重ねることは重要ですが、部分的な勝ちにこだわりすぎると結果的な利益は少なくなります。損切りは利益を大きくするための手段としてとらえることが大事です。
コツ2 逆指値注文を設定する
損切りを徹底する方法として、逆指値注文がとても有効です。
逆指値注文では損失の限界点を決めて、それ以上の損失発生時に自動決済を行います。感情を伴わず自動的な決済になることで、損切りを実行するために適した方法といえます。
コツ3 自動売買システムを使う
初心者の段階では、適した損失許容点の設定が難しいかもしれません。その際に有効なトレード方法が、自動売買システムを活用することです。自動売買システムは投資家の手をかけることなく、自動的に定められたルールに従ってトレードを行います。
感情による戸惑いが一切ないので、ルール通りに損切りができない投資家におすすめのシステムです。損切りに対する忍耐力を鍛えるためにも優れており、投資に慣れていない場合は積極的に活用してみましょう。
損切り貧乏になる原因
損切り貧乏とは
損切りは利益を出すための必須技術ですが、下手な損切りを繰り返すことによる損切り貧乏と呼ばれる状態があります。
損切り貧乏になると肝心の利益を出せません。損切り貧乏はエントリーと損切りのそれぞれが原因になっておこります。
1回の損切り額が大きい
損切りは損失を抑える技術ですが、1回の損切り額が大きい状態では損切りの意味がないです。
たとえば、投資資金100万円を保有している場合、1回の損切りで30万円を失うと3回の損切りで資金の9割が失われます。
また損切りで多くの資金を失うことで、元本まで回復するために大きな労力が必要です。もし50万円の損失を出した場合は100万円まで回復するために2倍の資金を稼ぐことになります。そうなるとリスクが大きいギャンブル的なトレードを行うことになり、最悪資金を失います。
1回の損切り額が小さすぎる
1回の損切り額が少ないことも損切り貧乏に繋がります。相場は常に変動を続けるため、エントリーの直後に含み損になることも多くあります。
しかし、トレードはリスクを取らないとリターンを得られません。ある程度のリスクを許容することで、初めて大きなリターンを得られます。
スキャルピングのようなわずかな利益を積み重ねる取引なら損切り額も小さくなりますが、考えなしに損切りを続けると結果的な利益が小さくなります。
説明できない損切りを行っている
計画性のない損切りを行うことで、損切り貧乏に陥ることもあります。
トレードで勝つには定められたルールのもとで、取引を実行することで利益が積み重なります。エントリーの理由や損切りポイント、決済の理由の説明など、トレードに関して説明できることで再現性のあるトレードを行えるのです。
損切り貧乏の投資家はトレード全般に関して、明確な理由なしに行動している場合があります。なんとなくのトレードは利益を逃す原因になります。
エントリーのタイミングが間違っている
投資では相場の上げ下げをかけて資金が投じられるため、予想が的中する確率は2分の1です。単純な勝ち負けで見るなら、勝率は50%になります。
しかし、テクニカル分析や過去の動向に照らし合わせて今後を分析することで、予想的中率は高まります。
したがって損切りを繰り返す投資家の場合は、エントリーの質が悪い可能性が高いです。エントリーの理論を再考し、質を高めたトレードを心がける必要があります。
損切り貧乏から抜け出す方法
エントリーポイントを絞る
投資においてはテクニカル分析を行うことで、場合によっていくらでもエントリーポイントを見つけることができるでしょう。しかし、うまく投資を行うにはエントリーポイントを絞ることが大切です。投資家ごとに勝てる場所は違うため、有利なポイントでエントリーを行うことです。
やみくもにエントリーしていても望む成績は得られません。トレードによっては損切りをすることもありますが、期待値の高いポイントを狙うことで全体を通して勝ちを増やしていけます。
短期的に負けてもトータルで勝てば良い
損切りを行うと一時的に資産は減少します。しかし、損切りの目的は局所での損失を抑えることで最終的な利益を大きくすることにあります。質の高いトレードの結果損切り回数が増えても、気にすることはありません。
トレードを繰り返せば勝ちが積み重なってくるので、最後には良い成績になるでしょう。また、大きな損切りで資産を大量に減らすと、利益を出すためのリスクが高まります。トレードによる損失は資産の2%に抑えるようにしましょう。
勝率が上がる方法を真剣に考える
トレードでは自分の頭で勝つ方法を考え続けることが全てです。何も考えずにトレードしても、損切りを繰り返しかねません。利益は得られず損失だけが積み重なっていくでしょう。
目標とする利益のためにはどのようなトレードをどれくらいの間隔で行えば良いのか、どれほどのリスクをかけるのか、などを常に考えましょう。綿密な戦略を立て機械的にトレードしていくことで、戦略の精度も上がり勝ちが積み重なっていきます。
損切りでよくある悩み
損切り額が大きくなる
トレードでは損切りをためらってしまい、損切り額が大きくなることがあります。同じように指定したポイントでのエントリーができないことがあります。これは想定する価格への変化まで待てず、焦ってエントリーしてしまうことが原因です。
引付がたりないエントリーをしてしまうと、ロスカットラインにきて損切りする場合の損失が大きくなります。エントリータイミングはいくらでも見つけることができます。十分な引付をしてポジションを取りましょう。
ロスカットになる回数が多くなる
損切りは最終的な利益を大きくするための技術なので、悪いことではないです。ベテラン投資家でも、損切りは日常的に行っています。
しかし、回数が多い場合はポジションの取り方が悪い可能性があります。トレンドに逆らっていないかどうか、見返してみましょう。
無理のないトレードを継続することで、利益が積み重なります。質の良いエントリーをしているならば、想定外の動きをして損切りの憂き目にあっても気にすることはありません。
ロスカット設定で悩む
損切りとエントリーのラインは投資を行う上で明確に定めるべき内容です。
損切りとエントリーラインを決定した理由を説明できなければ、あやふやなトレードをしていることになり、安定した利益を出すことも難しいでしょう。そのような投資家は、まず土台となるルール設定を行いましょう。
自分の出したい利益や考えのもとにエントリールールを定めて、高い勝率を維持できるようなトレードを行っていきましょう。
損切りのまとめ
損切りは損失を抑え、利益を出すために必須の技術です。
テクニカル分析や安値や節目など勝つトレードをするために質の良い戦略を立てましょう。また相場は変動するため、常に自分の頭で考えながら利益を積み重ねていきましょう。